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日本の食と農 いま大きな歴史の分かれ道(2025年06月23日 第1655号)

アメリカの輸入拡大要求は断固拒否を

 いま、日本の食と農の危機は、米危機とトランプ関税でより深刻な事態です。
 トランプ大統領の一方的な追加関税要求に対し、「日本だけは特別扱いに」との“陳情外交”が進められています。しかし、そもそも、トランプ関税はWTO(世界貿易機関)協定や日米貿易協定の約束を無視した不当なものです。こんな要求は突っぱね、各国と共同してトランプ大統領にこそ、政策の変更を求めるべきです。
 石破首相は、対米交渉で米や大豆、トウモロコシ、ジャガイモなど農産物を交渉カードに差し出すのではと報道されており、水面下でカードが提示されていることはまちがいありません。アメリカの米輸入拡大圧力に対し、日本政府は「米輸入」一辺倒です。(別項)
 「令和の米騒動」を経て、米価格は去年の2倍に高騰し、国民から悲鳴が上がっています。これに便乗して大商社はアメリカや台湾・ベトナムからの米輸入拡大を進めています。いま、日本の農と食の大きな歴史的分かれ道です。

米輸出は相手国の農業破壊
国内増産が必要なものは山ほど

 石破首相は、日本の人口は減少し国内需要は伸びないから、米の輸出拡大を通じて国内の米の生産量を増やし、いざという時の食料安全保障を進められるという詭(き)弁を繰り返しています。
 4月に策定された食料・農業・農村基本計画は2030年までに米輸出を35万トンとする目標を掲げ、24年実績(4・6万トン)の8倍近くに引き上げるとしています。
 米輸出のために新市場開拓用米として10アール当たり4万円(1俵=60キロ=当たり4400円)の補助金。しかし、これはWTO協定で禁止されている輸出補助金です。しかも、今回のような米不足の時でも、国内に回せば補助金が受け取れないので主食用には回りません。「飢餓輸出」そのものです。
 そもそも、農産物を輸出すれば、相手国の農民を苦しめ、農業を破壊します。私たち日本の農民がこの70年、身を持って体験し苦しめられてきたことです。

大豆・トウモロコシ・ジャガイモを差し出すな

 自民党の森山幹事長は、大豆やトウモロコシは国内生産が足りないから受け入れてもいいと表明しています。まさに自給率向上を放棄した自民党農政の本音です。
 大豆は自給率7%、トウモロコシはゼロ、小麦とともに国内増産を進めなければならない大事な作物です。ジャガイモも北海道ではジャガイモ・小麦・ビートという輪作体系の中心をなすものです。
 大豆は日本型食生活の根幹をなす豆腐・納豆・みそ・しょうゆの原料です。24年の国内消費量356万トンのうち輸入は316万トンでアメリカ産が7割を占めています。
 輸入大豆の9割は遺伝子組み換え(GM)大豆。トウモロコシもアメリカのGM比率は93%、ブラジルで88%であり、日本で流通する約80%がGM作物と推定されています。
 米は輸入できても、水田のもつ多面的機能は輸入できず、耕作放棄地は増えるばかりです。

水田は水田として生かしてこそ

 食料自給率38%を当面50%へ引き上げ、日本農業を再生するためには、水田を生かし米・小麦・大豆の輪作や2毛作による穀物自給率引き上げが重要です。
 畜産・酪農危機を打開するために、トウモロコシや牧草、水田を活用した飼料イネの増産など飼料自給率を引き上げることが求められています。