大規模も小規模も兼業も続けられる農業政策に 減反やめて米の増産を(2025年06月23日 第1655号)
「令和の百姓一揆」が緊急集会

(左上から右へ)菅野さん、藤松さん、秋山さん、高橋さん
「本当に本当に地域の危機なんです。国会議員の皆さんには命がけで取り組んでもらいたい。私たちもその先頭に立つから」--。6月5日、「令和の百姓一揆」実行委員会、「日本の種子(たね)を守る会」、JA有志連合の主催で都内の国会議員会館内で緊急集会が開かれました。
実行委員会の高橋宏道事務局長は集会の冒頭、「新しい農水大臣が米の輸入に言及し、『安いMA(ミニマム・アクセス)米を主食用に』という動きが出ていることに強い危機感を持っている。MA米に多額の税金が使われていることがまだまだ知られていない」と述べました。
茨城県常陸太田市のJA常陸の組合長で、「日本種子(たね)を守る会」会長の秋山豊さんは、「米不足のこの状況でも、市は今年、水田の34%を転作するとしている。あり得ない。これは国の方針に従っているからだ」と告発。秋山さんは需要量に対する生産量決定の仕組みを解説しました。国が全体の需要量を示し、その上で各県単位に「国が期待する生産量」を示し、それに基づき県の協議会が地域ごとの生産量を割り振るやり方だと説明。「減反政策が続けられている。米の生産について、政府は来年から政策転換するとしているが、本気で見直しをしないといけない」と述べました。
静岡県浜松市の米農家、藤松泰通さんは「米不足解消のために、農家の大規模化の議論が巻き起こっていることに疑問を持つ」と表明。藤松さんは「集約化や大規模化ができる地域は進めるべき」という前提で、水路やあぜ草の管理、地域のコミュニティー維持、生態系を守っていくために、小規模、兼業農家も続けていけるように、「農家への欧米並みの所得補償が今こそ必要だ」と訴えました。
社会的生産性を評価する重要性
愛知学院大学の関根佳恵教授は小規模・家族農業の再評価と支援拡充について言及。農業の生産性について、日本では「一反あたり」という「土地生産性」や、「1時間あたり」という「労働生産性」で語られる場合が多いことを紹介。関根さんは「もっと豊かな指標を用いるべきだ」と主張し、「投入したエネルギーに対しての産出量(エネルギー生産性)」や「その地域で農業が営まれることで実現されている多面的機能の価値(社会的生産性)」を評価することの重要性を解説しました。「環境への負荷が高く、多投入型の従来の農業モデルを見直し、政策決定や企業行動を転換させる議論を」と呼びかけました。
「令和の百姓一揆」実行委員会代表で、山形県長井市の米農家の菅野芳秀さんは涙ながらに「地域存続の危機が目の前に迫っていることを多くの人に知ってもらいたい」と訴えました。
農業政策を参院選挙争点に
「令和の百姓一揆」として、夏の参議院選挙の全候補者にアンケートを送付する準備を進めていることが報告されました。「新規就農者対策への考え」や「戸別所得補償制度の創設の是非」、「自給率を上げるのか、輸入依存を強めるのか」などの結果を「未回答」も含めて全国に広げ、農業政策を選挙の争点に押し上げていくことが確認されました。