不稔と斑点米 引き起こすおそれ 県や市も防除対策に補助金 〈寄稿〉 稲の食害を招くイネカメムシの脅威(2025年07月07日 第1657号)
埼玉農民連会長
立石昌義さん

埼玉農民連の立石昌義会長は6月6日に行われた農民連全国代表者会議で、イネカメムシによる農作物への被害について発言しました。立石会長に改めてイネカメムシの問題について寄稿してもらいました。
稲の主要害虫 収量・品質低下

穂を加害するイネカメムシ成虫

イネカメムシによる斑点米
一般社団法人・埼玉県植物防疫協会が発行する『埼玉の植物防疫』誌の2024年10月156号によれば、イネカメムシは稲の不稔と斑点米を引き起こす害虫として古くから知られていました。
イネカメムシは、防除薬剤の普及と水稲栽培の早期化等によって大きく減少していましたが、近年、再び稲の主要害虫として不稔や斑点米による収量・品質低下が問題となっています。
埼玉県でも2020年頃から県東部や北東部での被害報告が寄せられるようになり、23年にかけて被害が拡大しました。不稔(ねん)による顕著な減収や斑点米の多発による品質低下で農家経営に大きく影響した事例が相次ぎました。
24年は発生量の増加と発生地域拡大が顕著となり、調査した個体数が23年の数倍に達していたと報告されています。(埼玉県植物防疫協会・酒井和彦氏)
セイバンモロコシが主要寄生植物?
前掲『埼玉の植物防疫』154号から
◇談話室 イネカメムシの履歴書とセイバンモロコシの重要性
(1)希少種であったイネカメムシ
埼玉県環境部によるレッドデータブック1版は1996年に発行され、イネカメムシは「絶滅危惧種」に移行する属性を有するとされました。
(2)埼玉での再発見と増加
2018年に再発見され、22年ぶりの発生で今日に至っています。
(3)セイバンモロコシでの発見は
防疫協会事務局長の江村薫氏によるもので、加須市の利根川土手のセイバンモロコシ(イネ科)でイネカメムシを多数発見しました。江村氏は、セイバンモロコシが主要寄主植物である可能性が高いとしています。
セイバンモロコシは、牧草として日本に導入されたものでジョンソングラスのことです。
近年、土手の牧草セイバンモロコシは利用されなくなり、雑草としてはびっこっており、イネカメムシ増殖・越冬の場となっている可能性があります。また、田んぼに残るヒコバエやあぜのリュウノヒゲ(ユリ科)も同様です。
カメムシの専門家によると、カメムシの大量発生は思わぬ原因があるのではないか謎だとしていますが、温暖化に加え二酸化炭素濃度の増加にあると思います。イネカメムシ防除に農薬散布とともに、増殖の場となっている植物の排除などが今後の課題となっています。
広域防除支援や農薬購入費補助
埼玉県は、イネカメムシ広域防除緊急対策事業として1488万円の予算を組みました。ただし、ドローンや無人ヘリを利用したイネカメムシの広域防除に取り組む団体に対しての交付等です。一方、加須市カメムシ防除支援金交付金は1800万円で、農家の農薬購入費への補助金となっています。