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経営実態や就農の経緯学ぶ 若手農業者3人のほ場見学(2025年08月04日 第1661号)

東京農業大学(北海道)の学生

低投入型の有機農業の和田 徹さん
土づくりにこだわる邑松準一郎さん
予冷施設に投資する佐々木桜太さん

北海道・小清水町

 7月11日、北海道農民連の協力事業により、網走市に立地する東京農業大学北海道オホーツクキャンパスの自然資源経営学科で「新規就農ビジネス」コースを受講する大学生10人が小清水町を訪れ、3人の若手農業者のほ場などを視察し、農業経営の実態や就農までの経緯などを学びました。

土地利用を転換
野菜栽培ふやす

低投入型有機農業を説明する和田さん

 地元農家の後継者として就農した和田徹さん(41)のほ場では、3、4年前までは経営面積34ヘクタールで畑作3品・野菜を中心とした農業でしたが、労力的な負担軽減や資材価格高騰への対応から、土地利用を大きく転換させ、大豆、ライ麦、小豆、デントコーン、人参、バレイショを栽培しています。
 最大の特徴は、カバークロップ(休閑緑肥)として、マメ科作物やヒマワリ、大根など10種類以上の作物を栽培し、全体面積の約2割を占めている点にあります。これによって肥料代や農薬代が大幅に節約されており、有機JAS認証を取得したほ場(申請中も含む)も約29ヘクタールでやや収量は低下していますが、農産物は高単価で販売されているため、所得率は50%を超えているとのことでした。
 低投入型の大規模有機農業として注目すべき動きです。

有機JAS認証
栽培方法に工夫

玉ねぎの栽培について語る邑松さん

 東京農業大学を卒業後、一般就職を経て第三者継承で2024年に新規参入就農した邑松準一郎さん(29)=愛知県出身=は、12・3ヘクタールのほ場で玉ねぎ、大豆、小麦、レタス、人参、バレイショなどを栽培しています。このうち有機JAS認証を取得しているのは玉ねぎ2ヘクタール、転換中が大豆・小麦となっています。栽培方法へのこだわりとして土づくりを挙げており、木材チップを使用した完熟堆肥、微生物資材、米ぬかを使用しています。
 学生時代の農業アルバイトで小清水町に縁があり、就農前の農業研修は小清水町で約2年半行いました。研修中に小清水町で農業を営む工藤孝一さん(72)とのつながりができ、第三者継承による新規参入就農で農業経営の基盤である農地・機械・販路などを確保することができました(農地や機械は金融機関等から資金借り入れ)。農業の喜びを感じる瞬間は、収量が伸びたときであり、自分自身で経営判断をすることができることに、仕事としてのやりがいを感じています。

カット野菜扱う企業と販路契約

新規参入で就農するまでのプロセスを語る佐々木さん(右)と邑松さん

 同じく東京農業大学を卒業後、一般就職を経て22年に新規参入就農した佐々木桜太さん(30)=神奈川県出身=は、13ヘクタールのほ場でレタスと春菊を栽培しています。学生時代に農業アルバイトで小清水町に縁があり、就農前の農業研修は小清水町で3年間行いました。農地を取得する際に物件がほとんどなく、ようやく出てきた物件(藻琴山のふもと・標高100メートルのほ場)を取得(資金借り入れ)して新規参入就農しました。
 経営の中心はレタスで、2回収穫するほ場もあるため、延べ20ヘクタール分のレタスを収穫しますが、24年に予冷施設を設備投資しています(資金借り入れ)。販路はカット野菜を取り扱う企業と契約し、関東のスーパーなどへ流通しています。8月中旬から9月中旬がレタスの取引単価の高い時期であり、そこに経営資源を集中させていますが、今年は雨量が少なく干ばつ傾向であるため、栽培管理に苦労しています。
 以上のように、訪問した農業者の経営内容は三者三様で、それぞれに特徴がみられました。小清水町も近い将来、後継者不在の高齢農業者のリタイアが進むことが予想されるため、非農家出身者による新規参入就農対策はより重要になると思われます。また、有機農産物を求めるニーズが存在するなかで、資材価格高騰といった課題が存在します。低投入型の有機農業という点では新たな技術・経営対応として注目される実態を把握することができました。(東京農業大学生物産業学部教授 菅原優)