要求実現・農政転換へ共同さらに 参議院選挙 自公が半数割れ 18選挙区で野党候補が勝利(2025年08月04日 第1661号)
7月20日に投開票された参議院選挙では、32の1人区で野党が18選挙区で勝利しました。農民連も農村部の各選挙区で、野党共同候補の勝利に力を尽くしました。勝利に貢献した各県連の奮闘と農政転換への決意を紹介します。
岩手 農業つぶしの自民党はこらしめないと!
市民と野党の共同候補 横沢高徳さん勝利

選対事務所の代表に要望書を手渡しました

当選の報告をする横沢議員
「米不足でみんな困ってるから、米づくりをがんばんなきゃと思ってるけど、そんな簡単に増やせない。国は何やってんだ」…春先から岩手県内のどこに行っても共通して出された声です。
このようなもと行われた今回の参議院選挙に向けて、6月に開いた岩手県農民連の執行委員会では「農業つぶしの自民党はこらしめないと」という意見が相次ぎました。これを受け、岩手選挙区では「市民と野党の共闘」候補として奮闘してきた横沢高徳さん(立憲民主党、現職)勝利のために県連として奮闘することを確認しました。
公示日直前には県農民連をはじめ、県内の各団体・労組と一緒に横沢事務所を訪問し、政策要望書を手渡しました。県農民連からの要望書は自給率向上と米危機打開を柱に9項目にわたるもので、選対担当者も「戸別所得補償の復活をはじめとし、生産を守る政策の実現に取り組む」と答えました。
選挙本番に向けては、「農民組合員ひとりひとりに『もう一回り広げてほしい』と訴えよう」と提起。米内農民組合(盛岡市)では赤坂誠悦組合長が全組合員を激励して回りました。対話をするなかで「5年に1回は水張りなどの転作支援の改悪など、自民党は何を考えているんだ。牧草転作をがんばってきた中山間地の農業がつぶされてしまう」という怒りの声が相次ぎました。
また、「米がたいへんなときに、アメリカいいなりで外米を増やそうという魂胆が丸見えだ。選挙区の自民党の候補者は『オレに任せろ』なんて連名ポスターをずっと貼っていたが、あんなのには任せられない」と厳しい声が寄せられました。
選挙の結果、岩手選挙区では横沢候補が自民・参政などの候補者を抑え、2回目の当選を果たしました。久保田彰孝県連会長は「これまでの市民と野党の共闘を力に、地域農業を守る政治を前に進めるために農民連の運動と組織を大きくしていきたい」と決意を語っています。
(岩手県農民連事務局長 岡田現三)
長野 3項目の政策申入書交わし、勝利へ奮闘
市民と野党の共同候補 羽田次郎さん再選
「農民」号外携え、農家と対話

街頭で訴える羽田さん
長野県では、農家が減少し、担い手不足のなか、どうしてもこの現状を変えなければ、国産の食料が確保できず、主食である米も外国産に頼らざるをえなくなる状況が生まれようとしています。
規模拡大や長年実施されてきた政策により生産意欲の減少や生産者の高齢化、生産量の減少に歯止めがかからなくなる状況を何としても変えなければと、長野県農民連の荒井賢蔵会長の呼びかけで、市民と野党の共同候補の羽田次郎さん(立憲民主党、現職)と政策申入書を交わし、自公を過半数割れに追い込もうと奮闘しました。
申入書では、(1)再生産が可能な所得補償制度の確立、(2)政府備蓄米の拡大とゆとりある生産目標をたて、米の生産量の拡大を図る、(3)MA(ミニマムアクセス)米は国内生産量に比例した数量まで削減を図る--の3点で合意しました。
長野県農民連は参議院選挙のなかで、新聞「農民」号外を4100部配布しました。
自民党農政代え所得補償実現を
上伊那農民組合の竹上一彦さんは「号外」を持って、「生産が続けられ、消費者も買える、安定した米価を国の責任で作らせよう」と呼びかけて歩きました。「自民党農政を早く終わらせて」「野党共闘でがんばる農民連はすごい」など対話が弾みました。
大接戦のなか、羽田さんが再選を果たしました。竹上さんは「長野県は昨年の概算金が他の地域よりも低く、今年もまだ金額が明らかになっていません。白毛餅の産地として、農民連会員を減らさずにがんばっていますが、自民党では農村は持続できません。自民党農政を代えて、価格保障・所得補償を実現したい」と語っています。(長野県農民連 庄田正美)
新潟 打越さく良氏2期目当選
「所得政策必要」の首相答弁引き出した
県内5カ所で“つどい”を開催

支援者らと当選を喜ぶ打越さん

長谷川会長を迎えて開かれたつどい
参議院選挙の新潟選挙区(定数1)では、打越さく良氏が自民党候補に競り勝って2期目の当選を果たしました。
打越氏は農業問題で「米の生産を増やし、直接支払い制度の実現や戸別所得補償のバージョンアップを進めていく」と訴え、農村の支持を集めてきたことも勝利につながったのだと思います。
新潟県農民連としては、推薦はしていませんでしたが「自主支援」として地域では実質的に共闘の取り組みを行ってきました。農民連に対しては、打越氏から農業問題に関するレクチャーの依頼があり、「農民」号外を活用しながら農村の実態と必要な政策を説明。打越氏は翌日の国会で戸別所得補償の必要性を追及し、石破首相から「所得政策の必要がある」という答弁を引き出しています。
また、6月に行った「令和の百姓一揆・新潟版」も立場を超えた共闘での開催となり、市民への大きなアピールになったと思います。公示後には県連としても自公政権を過半数割れに追い込んでいこうと全国連の長谷川敏郎会長を迎えて県内5カ所でつどいを開催してきました。
参加者からは米問題で備蓄米を安売りする小泉劇場に対する不満や自民党農政が疲弊する農村を野放しにしてきたことへの怒りが話されるなど、野党躍進への期待も寄せられていました。つどいに参加した人から新たに新聞「農民」の読者に2人、会員も1人増やすことに結びついています。
自公が少数となった結果については、今後の展望を切り開いていくうえで重要ですが、一方で排外主義の立場で訴えた政党が得票を伸ばしたことは、新潟選挙区でも票を積み上げており、とても心配な面もあります。
これからも農村の未来を守る政治を実現させるために、県連として奮闘していきたいです。
(新潟県農民連事務局長 鈴木亮)
愛媛 県農民連と連帯する 永江孝子さんが再選

街頭で有権者と交流する永江さん
5月に行われた愛媛県農民連の大会で、参議院選挙にあたって、定数1の愛媛選挙区は、現職の永江孝子さん(無所属)の推薦を確認し、選挙戦でも奮闘してきました。
永江さんは選挙中に、安保法を廃止し、憲法9条で平和を守る、企業・団体献金の禁止など国政の重要課題のほか、食料自給率100%目指して「所得補償」で農林漁業を応援するなど農政の分野でも、私たちの要求と一致する政策を訴えてきました。
選挙結果は、永江さんが自民党の新人で公明党が推薦する候補らを抑え2回目の当選を果たしました。
永江さんは、県連が支持団体として参加した6年前の当選後、県農民連の農水省交渉に立ち会っていただき、県連大会に毎年、連帯のあいさつを届けてもらっています。
永江さんには、農家の声、地方の端々の声を国政に届けてもらうことを期待しています。
(愛媛県農民連会長 森井俊弘)
宮城 米の大増産、所得補償を 石垣のりこさん大差で再選
市民連合みやぎの仲介で政策協定を結び応援

市民と野党の統一候補、石垣さん
定数1の宮城選挙区では7人が立候補し、選挙戦は、自民、公明、立憲民主、れいわ、参政党と全国の縮図のような状況でした。令和の米騒動で米、食料、農業問題が米どころ、宮城では大きな争点でした。
農協政治連盟をはじめ、各農業団体や35自治体の首長の推薦を受けた自民党の候補者には、石破首相も2度、仙台入りし、農村部でも小泉農水大臣、小野寺五典政調会長ら大物幹部を投入しての力の入れようでした。
市民と野党の統一候補、石垣のりこさん陣営も、立憲民主党の野田党首が自ら農村部に入るなどして、米の大増産、農家への所得補償の充実を訴えました。
選挙結果は、7万4千票の差をつけて、石垣さんが再選されました。
宮城農民連は、石垣候補と6年前に、食料と農業を守り発展させるため、政策協定を結び、全面的に支援し、この間も国会、農水省要請行動などで協力・共同の関係を強めてきました。
宮城では、市民連合みやぎが仲介して、日本共産党県委員会と立憲民主党宮城県連と政策協定をいち早く結んで、選挙戦に臨みました。市民連合主催の街頭演説会も企画しました。
選挙戦では、参政党による「日本人ファースト」の宣伝にも、石垣候補は反撃の論戦を行い、統一候補として人権第一を訴えての奮闘ぶりでした。
(宮城農民連事務局長 鈴木弥弘)
沖縄 高良沙哉さん「オール沖縄」 平和の1議席守った

街頭から訴える高良さん
沖縄選挙区(改選数1)では、沖縄大学教授で無所属新人の高良沙哉(たから・さちか)さん(46)=立憲民主党、日本共産党、社民党、沖縄社会大衆党推薦=が、自民党公認候補らを破り、初当選しました。
ジェンダー・憲法学の研究者である高良氏は、名護市辺野古の米軍新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力からの出馬要請を受け、立候補しました。
今回の改選に立候補しないと表明した現職の高良鉄美議員の後継として、沖縄の「平和の1議席」の継承を掲げ、他の4人との争いになりました。
選挙戦で高良氏は、「『生きる』を政治の真ん中に」をキャッチフレーズに、▽日々のくらしを安心して生きる▽多様性を認め、差別のない社会に生きる▽基地被害のない沖縄で平和に生きる-を示し、実現をめざすと強調。物価高騰から生活を支えるための消費税減税や選択的夫婦別姓の実現を掲げた上で、辺野古新基地建設ノー、沖縄を再び戦場にすることを想定した軍備増強は止めていくと訴えました。
農業問題でも、(1)亜熱帯の気候や土壌など、沖縄の特色ある自然環境を生かした農林水産業の振興を図る、(2)若手農業者、小規模農業者の支援を強化し、農業従事者の確保・育成を図る、(3)沖縄の基幹作物であるサトウキビ生産の振興を図る、(4)畜産をはじめ粗飼料、肥料、燃料等の高騰で甚大な打撃を受けている農林水産業を支援し、物価高対策に取り組む--などを公約に掲げました。