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参議院選挙の結果について 2025年7月22日 農民運動全国連合会会長・長谷川敏郎(2025年08月04日 第1661号)

 一、7月20日に投開票された参議院選挙で、自民・公明の与党は改選議席を大幅に減らし、衆議院に続いて少数に転落しました。農村地域が多い32の1人区で野党が18選挙区で勝利し、とりわけ、立憲民主党と日本共産党が候補者を1本化した17選挙区のうち12選挙区で勝利したことが、与党を敗北に追い込む大きな流れを作り出しました。
 衆参での与党過半数割れは、自民党が2012年12月に政権復帰して以来、アメリカ言いなり、大企業の利益最優先の新自由主義政治の破綻であり、国民のノーの意思が突きつけられたものです。自公政権は民意に基づいて下野すべきです。
 そして市民と野党共闘を発展させれば野党政権が展望できる状況の今、米、食と農の危機を招いた自民党農政を断ち切る絶好のチャンスです。
 一、農民連は、野党共闘が勝利した1人区はもとより、惜敗した選挙区でも重要な役割を果たしました。新聞「農民」で米不足問題やトランプ関税を跳ね返す特集を連打しました。全国で50万枚活用された新聞「農民」号外(春・夏号)への反響は大きく、小集会や各種団体の学習会が数多く開かれ、米と農業問題を争点に押し上げる大きな力になりました。
 一、昨年10月の総選挙で立憲・国民・れいわ・共産・社民は共通して「食料自給率を50%」を掲げました。それはこれらの党が食料自給率向上を投げ捨てた食料・農業・農村基本法の改定に、農民連をはじめとした国民運動と共同して反対したからです。
 「令和の米騒動」を経て、積年の自民党農政の失敗が国民の前に露見するなか、野党は共通して直接支払制度を公約しました。共産党は価格保障・所得補償の実現と1兆円の農業予算の拡大を訴え、立憲民主党は「食農支払」、国民民主党は「食料安全保障基礎支払」を掲げ、れいわ、社民も農業予算の大幅増額と所得補償を訴えました。政府備蓄米の在り方についても、米価下落時の政府買い入れや、備蓄水準の積み増しも共通して掲げました。
 これらは農民連が一貫して主張してきた「米の増産」、「食料自給率向上を農政の柱に」、「家族農業を支え、価格保障・所得補償を」の要求と多くの点で一致します。
 今後、各党が政策の違いではなく共通点で共同するなら、日本農業再生への政策転換は可能です。農民と市民と野党の共闘の前進を追求してたたかう農民連の役割はますます重要になっています。
 一、今度の選挙で「日本人ファースト」を掲げる極右・排外主義勢力が台頭しました。彼らはそのキナ臭さを隠すために有機農業や食料自給率の向上を掲げました。
 しかし、農民連が掲げる有機農業を含むアグロエコロジーは自然の多様性を受け止め、生態系の力を生かした農業をめざしています。そこには排外主義も農民の分断もありません。排外主義や差別は農業を発展させるうえで大きな障害であり、農民連は排外主義を阻むことを明確に訴えます。