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トランプ関税交渉 “合意”内容を農水省が説明 トランプ大統領の圧力利用し、政府備蓄米をMA米に置き換えか(2025年08月11日 第1662号)

国民大運動実行委の要請で農水省を質しました=7月31日

 7月30、31の両日、農民連はトランプ関税について政府に対応を質しました。30日は日本共産党の田村貴昭衆院議員に対する説明会で、外務省北米局、内閣官房トランプ関税対策本部事務局と農水省輸出・国際局及び農産局が対応しました。
 政府側は「MA(ミニマムアクセス)米枠も主食用のSBS枠も増やしていない。アメリカ米の即時75%拡大と言われているが、あくまでアメリカのファクトシートに掲げてあるだけで日本が合意したわけではない。守るべきは守った。アメリカが約束通り関税25%を15%に引き下げるか注視」との説明に終始しました。
 しかし、75%拡大に食い違いがあってもアメリカの要求に応えるのかとの問いに、担当者は「カルロースなど主食に回せる米を備蓄米として利用すると想定し、アメリカという産地指定でなくグローバルテンダー(世界入札)で中粒種を輸入することはできる」と説明しました。

MA米77万トン輸入こそ大問題!
アメリカ米特別扱いはWTO協定違反

 そもそも、MA米はWTO(世界貿易機関)協定では輸入機会の提供と定められ、義務輸入ではありません。1995年の輸入開始以来99年の米関税化から毎年77万トンを輸入し、その処分に膨大な国費を浪費して、国内の需給に影響を与えてきました。
 「MA米の枠内」だから影響がないというのは、間違った政策を既成事実化した開き直りに他なりません。
 WTO協定の無差別原則は輸入品の原産地別差別はしてはならず、アメリカ米だけ特別扱いすることはできません。そのため、長粒種米を減らし、主食用に使えるアメリカ産中粒種米を増やすという抜け道を使う考えです。しかし、これまで長粒種をタイから輸入し、米価高騰でベトナムなどからジャポニカ米を輸入しています。アメリカ米だけ特別扱いはWTO協定違反として他国とあつれきが生じます。

政府備蓄米制度を解体
いざという時はアメリカ産米

 31日の「軍事費を削って、暮らしと福祉・教育の充実をめざす国民大運動実行委員会」の農水省要請では、MA米の枠内でアメリカ米輸入の「即時75%拡大は日米合意か」との質問に「はい」と答えています。
 一方、米不足で政府備蓄米80万トンが放出され、政府倉庫は空っぽです。農水省の担当者も「来年3月末在庫は7・3万トンの見込み」と認めました。「今年の作柄が高温障害や干ばつなどで心配される。政府備蓄米を100万トンに造成する計画を示せ」との要請に、備蓄米買い入れ再開や造成計画の具体化について「検討中」としか答えません。現在、MA枠でアメリカ米を36万トン輸入しており、これを「即時75%拡大」すれば60万トンになり、政府備蓄米に使用するねらいは明らかです。
 7月25日の内閣官房文書は「日本国内のコメの需給状況等も勘案しつつ、必要なコメの調達の確保」としています。MA米の枠内だから大丈夫なのではありません。アメリカ米60万トンを備蓄米に回せば、日本の米の作付けはさらに10万ヘクタール減らされる可能性があります。
 もともと、財務省の財政制度等審議会建議は「ミニマムアクセス米を活用するルールを設けるなど政府備蓄米の備蓄水準・財政負担の減少につなげる工夫を検討する」(24年11月29日)ことを従来から強く要求していました。
 国産米の政府備蓄制度を縮小し、いざという時は国民にアメリカ米を食べさせるもくろみです。