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産直運動の原点今こそ 農民連ふるさとネットワークが総会 干ばつ・酷暑のなか 切実な現場の声次々(2025年08月11日 第1662号)

(左上から時計回りに)根本さん、鈴木さん、松田さん、野村さん、小林さん、富沢さん

 農民連ふるさとネットワークは7月25日、都内で第22回総会をオンライン併用で開催しました。各産地から出された声を中心に紹介します。
 政府の減産政策による米不足と価格高騰のもと、さらに、続く異常高温や異常気象が農作物の生育・生産に多大な影響を及ぼしている中での総会の討論・発言は切実な現場の声が相次ぎました。

暑さに農民困惑
北海道農民連・富沢修一さん

 「道内で非常に暑い日々が続いている。私の住む地域でも小麦の収穫が終わったばかりだが、ここ数年で一番早い刈り取りとなった。イネの生育も例年より10日ほど早い。タマネギは高温と雨不足で倒伏が始まっている。すべての作物で収量減が大きくなってしまうのではないか。何より農民が暑さで参っている」

農業を守る1俵
農民連にいがた産直センター・鈴木亮さん

 「新潟では6月下旬から約1カ月まとまった雨が降っていない。追肥をしないと収量低下と高温障害が出る。2年前の『7割以上が3等米』という事態への再びの懸念、米価格の推移と合わせて農家の間で不安が広がっている。その中で、農民連としてどう産直・準産直米を確保していくのか。『米と農業を守っていくための1俵』という思いを生産者に伝えて集荷の協力を呼びかけている」

かなりの減収に
大矢野有機農産物供給センター(熊本県)・松田浩二さん

 「私たちの地域でも酷暑・干ばつの影響で、かんきつの2次落果などが増え、全体の収量がかなり減る見通し。野菜も数量がしっかり取れない。どちらも収穫量が年々落ちている。
 もう1つ大きな課題になっているのはインボイス(適格請求書)で、免税農家からの仕入税額控除がいまは80%だが来年から50%になる。組織の維持が厳しくなる中で、『生産者ごとに単価を変える』というのは現実的ではないと思っている。各地の組織の対応はどのようにしているのか、今後に向けて交流もしていきたい」

協議と合意こそ

 厳しい生産現場の実態の中で、今後の産直組織の発展に向けた思いも語られました。特に、新日本婦人の会との産直運動の経験と確信が、今後の展望につながるという趣旨の発言が多く出されました。
 「新婦人との運動は産直の原点。産地・生産者としての率直な提起をした上での協議が大切」(栃木産直センター・野村和史さん)
 「新婦人との学習交流会では私自身も『新自由主義経済の中で利益追求の対象になった米を市民の手に取り戻す運動が米の産直です』と伝えてきた」(多古町旬の味産直センター、千葉県・小林由紀夫さん)
 「6月に全県提起で米産直の会員3割増を呼びかけた。地域の生産者(農民連)・消費者(新婦人支部)で協議してもらい、注文数量と米産直会員ともに全体で1・15倍になった」(しずおか産直ネットワーク・吉川利明さん)
 根本敬代表は、「『食料主権』を確立し、『農民の権利宣言』を法的に構築することが、持続可能な農業の新たな境地を切り開くことになると確信している」と述べました。
 ふるさとネットの22期事業計画として、準産直米の取扱数量の目標を4万俵とし(前期並み)、学校給食の取り組みとして有機米の取り扱いを強化、産直事業としてカタログ通販サイトの本格稼働などが採択されました(今回の役員改選はなし)。紙智子さん(日本共産党前参院議員)、由比ヶ浜直子さん(新日本婦人の会中央本部事務局長)、平野裕子さん(主婦連合会副会長)が来賓あいさつを行いました。