米不足の原因は棚上げ 「増産」名目にスマート農業・輸出企業を支援(2025年08月25日 第1663号)
水活」・「減反」廃止では米づくりは安定しない
8月5日に「米の安定供給に関する関係閣僚会議」が開催され、各マスコミでは一斉に「米生産量の不足認め、減反政策を廃止して増産へ」などと報道しています。
農民連は昨年春から米不足の実態を告発し、政府に対して備蓄米放出をはじめ減産から増産への転換を強力に求めてきました。運動と世論に押されて、政府は米不足を認めざるをえなくなり、政策の見直さざるをえなくなっています。
しかし、マスコミが報道するほど、政府が増産に転換したとは到底評価できません。
米不足は「大凶作」並み隠ぺいされた主犯
2020年の新型コロナ感染拡大を要因とした米需要の消滅による「過剰在庫」を放置した安倍内閣は、2021年産米の米価大暴落にも何ら手立てを取りませんでした。
そして、米価が下がって困るのは農家だとして、21年産から生産調整の拡大を米農家に押し付け、単年度では需要を満たせない生産を続けた結果、需要量に対して60万トンもの不足となりました。これが米不足・価格高騰の原因であることには一切触れていません。
日本農業新聞の試算によると、23~24年の米不足56万トンは「大凶作」並みで、「備蓄米放出」の目安に相当します(表)。それにもかかわらず「足りないはずがない。必ず米はある」(25年1月、江藤拓農相)などとして、備蓄米放出をさぼるなど、まともな対策をとらなかった--令和の米騒動の主犯は自民党政治です。
本格的な米増産政策とはほど遠い
「今後の方向性」では、「農地の集積・集約、大区画化、スマート農業、新たな農法等による生産性の向上」「輸出の抜本的拡大」など、破たんした政策の枠内での生産体制の推進を並べるだけで、「減反政策廃止」をキャッチフレーズにして、水田活用直接支払交付金を廃止するものです。稲作をギリギリで支えてきた農家への支援強化とは程遠いものです。
今後増産するためには、作付面積の純増が必要で、耕作放棄田での生産拡大も求められます。「方向性」でも「耕作放棄地も活用」としていますが、大規模ほ場整備やスマート技術の利用が押し付けられることは明白です。
備蓄制度拡充と国の需給コントロールで増産リスクをなくす
増産は容易ではありませんが、増産しても米価と需給を市場任せにしたのでは意味がありません。政府が、自然災害も考慮して絶対に不足を招かない余裕のある需給計画をつくり、空っぽ状態の備蓄制度を再構築し、定着してきた飼料用米確保など、本腰を入れた増産の計画をつくることが必要です。
「極端な気象現象」による不作や国際的な穀物需給の変動が常態化しつつあることから、主要食料の安定供給をはかるため、米・麦・大豆・飼料用穀物などは、消費量の1年程度の備蓄をめざすべきです。
備蓄積み増し分を含めた基本計画の生産目標に見直し、作況オーバー分も同様に再生産可能な価格で政府が必ず買い入れを行うことを「出口対策」として確立する必要があります。
生産者に生産調整を押し付けるだけの「需要に応じた生産」方式が米不足・価格高騰を招いた元凶であることを直視し、増産による価格リスクは備蓄制度で吸収することと、所得補償・価格保障の確立で持続的・安定的な米づくり、土地利用型農業に転換させることが必要です。
自治体要請や、消費者・流通業界などと連携を強め、全国から米守れの声をさらに大きく広げていきましょう。