原発事故が起これば農業の継続も困難に 農業者からも不安の声(2025年09月08日 第1665号)
隣接する若狭町の米農家 長橋努さん(49)、吉田智里さん(44)夫妻

長橋さん(右)と吉田さん
関西電力の方針に対し、福井県で農業を営む生産者からも不安の声が上がります。
美浜原発の隣町、若狭町で無農薬・無肥料で米作りをしている長橋努さん(49)、吉田智里さん(44)夫妻も新規建設はやめてほしいと声を上げます。
関東から移住した夫の長橋さん。子育てをしながら、6ヘクタールの米作りに勤しんでいます。自然の資源を生かして、ロスの少ない生産を心がけています。
「豊かな自然は食に困らず、命を育むことができます。しかし、原発事故が起これば、生産も続けられなくなります。災害が多発し、核燃料の処理方法も決まっていないのに、原発を新増設することは反対です」
同時に、地域の人と町の未来についても考えていきたいとも考えています。「原発のことを語ることにタブー感もありますが、地域の未来にとって、本当に大事なものは何かを話し合う場が必要だと思います」と長橋さんは語ります。
妻の吉田さんは、福島第一原発事故後、宮城県の有機農業者とつながりました。吉田さんは、「知人は『福島の事故をなかったことにしないでほしい。忘れないでほしい』と何度も話します。自然環境や人の健康のことを考えて、大切に土を育てて、自然に沿ったくらしを営んできた方が、原発事故の被害を受けたことがすごくショックでした」と述べます。
原発の再稼働や新規建設については、「福島の事故の教訓を無視していると思います。被災後も農業をがんばっている方々に、未来へつながる動きにならないことが、申し訳ない。だから原発のある地域でできることはないかと考えています」と話します。