米政策解体、飢餓と亡国に突き進む財政審提言(2025年09月08日 第1665号)
MA米を主食に、政府備蓄米と飼料用米は廃止!?

農業予算削減の立場から米・農業政策の改悪を推進してきた財政制度等審議会(財政審)の農業つぶしがエスカレートしています。石破政権は財政審の提案に忠実に米政策を推進し、日本農業をさらに危機に追い込もうとしています。
政府備蓄米にMA米を活用し主食に回すことを提言
小泉農相は6月6日の記者会見で、高騰する米価格を抑えるため、政府備蓄米が尽きた場合、外国産米の緊急輸入も検討していることを明らかにしました。残る約30万トンの備蓄米を放出しても価格が落ち着かなければ、無関税で政府が輸入する「ミニマムアクセス(MA)米」の活用を検討していると述べていました。
さらに12日には、MA米のうち主食用(SBS)の入札時期を前倒しすると表明。例年は9月の入札開始時期を6月に早め、初回の入札は3万トン分、7月も3万トン分を実施し、いずれも全量落札されました。
こうした一連の動きは、政府備蓄米の削減とあわせて、緊急時にはMA米を主食に回すことを要求していた昨年11月の財政審建議の中身をさらに推し進めるものです。
財政審の十倉雅和会長(経団連会長=当時)は今年5月27日、財政審建議からさらに踏み込んだ提言「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」を加藤勝信財務相あてに提出しました。「提言」では、「MA米について、SBSの入札を前倒しで行うことや、SBS枠の柔軟化を行うことなどによって、民間の実需に応じて主食用米として活用できる余地を高めることが望ましい」としています。
政府備蓄米の縮小・廃止を提案
備蓄米については、「必要経費を支援することはやむを得ないとしても、民間在庫と合わせた保管に移行し、弾力的に活用する仕組みを検討すべき
である」と述べています。
さらに、財政面でも、「処理費用等の大幅な削減が見込まれる」として、国家備蓄の政府保管と民間保管での国費負担を試算(表)。政府保管の場合は403億円であるのに対して、民間保管の場合は、16億円で済むとしています。
これは、6~8月の放出によって、ともかくも米価高騰をおさえてきた政府備蓄米の機能を投げ捨て、財界言いなりに政府が米の価格と需給のコントロールから完全に手を引くという宣言にほかなりません。
飼料用米を交付対象から外せと提言
昨年の建議では、水田農業について「高米価に頼らない、自立した産業へと転換を進めていくべき」「まず飼料用米を水田活用の直接支払交付金の交付対象から外し、財政面での持続可能性を確保していくべき」と提言していました。
5月の提言では「生産面において、多額の補助金により、これまでどおりに転作を進めるのではなく、国内外の多様なニーズを踏まえた稲作の可能性について検討を進める必要」があると述べ、「これまで生産・利用体制を構築してきた産地の実情は勘案するとしても、転作の観点からはもちろん、飼料政策の観点からも、一律に高い単価で支援する必要はなく、見直すべきである」と、飼料用米への政府支援の見直しと廃止を求めています。
財政審のねらいは、アメリカ産トウモロコシに依存した輸入飼料依存体制を永続化させるとともに、米危機に乗じて国産米を外米に置き換え、大軍拡の財源を確保するために米と農業を犠牲にするもので、飢餓と亡国を進める「提言」です。
与党過半数割れを力に、農政の転換を
昨年の衆議院選挙、今年の参議院選挙を通じて、自民・公明与党が衆参で過半数割れし、ほとんどの野党が食料自給率向上、所得補償の実施、新規就農支援、農業予算増額では一致しています。
このチャンスを生かし、亡国と飢餓に追い込む与党・財政審・財界の攻撃をはねかえす国民的大運動をいっそう強め、自給率向上や農家の所得補償、ゆとりある米需給のための増産、新規就農者支援、食料支援制度の創設、そのための予算の大幅増額と農政転換のために奮闘しましょう。