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“気候変動による農業への影響と適応” イギリス科学誌『ネイチャー』が掲載 世界の主要作物の未来を試算する(2025年09月15日 第1666号)

 2004年は国連が定めた「国際コメ年」でした。当時は、世界人口62億人の半数が、米を食べていました。2025年現在、世界人口82億人の半数が米を食べています。
 その内訳は、インディカ米(長粒種)が80%、日本人が食べているジャポニカ米(短粒種)が20%となっています。
 2025年6月18日に公開されたイギリスの科学雑誌『ネイチャー』に掲載された論文「気候変動が世界の農業に与える影響と適応」についての要旨を紹介します。
 アメリカの大学の研究グループは、世界54カ国の1万2658地域の主要6作物(米・小麦・トウモロコシ・ソルガム〈コーリャン〉・大豆・キャッサバ)が気候変動の影響をどの程度受けるかを研究し報告しています。
 それによると、今世紀末までに世界の平均気温が約4度上昇した場合には、小麦の生産量はヨーロッパ、アフリカ、南米で15%~25%減少し、中国、ロシア、米国、カナダで30%~40%減少する可能性があると予測しています。トウモロコシの生産量は、米国、中国東部、中央アジア、アフリカ南部、中東で最大で40%減少する可能性があると報告しています。
 一方、米だけは生産量の大幅な減少を免れる可能性があり、6%にとどまる見通しとなったと報告しています。
 また、研究グループは、生産量の減少に的確な適応戦略を実施することにより2050年までに世界の損失を23%、2100年までに34%削減できるとし、食料安全保障を確保し気候変動の影響を緩和するためには耕作面積の拡大が必要と結論づけています。

(埼玉農民連会長 立石昌義)