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アメリカ産米を75%増 大統領令の中身が明らかに(2025年09月22日 第1667号)

 アメリカのトランプ大統領は9月4日、関税措置に関する日米合意を履行する大統領令を発表し、日本政府が発表していた内容通りと日本のマスコミは報道しています。なお、アメリカは、日本による日米合意の履行状況を監視し、日本が約束を履行しない場合、さらに関税を引き上げることができるとも記載されています。

 

 

MA米の8割はアメリカ産米に

 

一石二鳥の財務省 MA枠増やさず財政カット

 アメリカ産米はMA(ミニマムアクセス)枠77万トンのうち、毎年約35万トンが輸入されており(図1)、75%増は25万トン増に相当し、アメリカ米の輸入量は60万トンにも及ぶことになります。
 政府備蓄米の不当なダンピングを小泉農水大臣が行ったことにより、在庫は30万トンを切る状態になり、25年産米買い入れのめども立たないもとで、国産米による備蓄運営は継続不能にされてしまいました。
 「MA米を備蓄に使え」という今年5月の財政制度等審議会(財政審)の提言は既定路線になりつつあります。しかし、精米でしか輸入されない外米は、2年くらいで更新しなければならず、玄米保管の国産米と違い長期間の品質保持はできません。
 そこで浮上してきたのが、棚上げ備蓄を改め、1~2年で販売する回転備蓄方式に回帰し、MA米を低価格米として販売するという策略です。
 米不足・価格高騰を生み出し、トランプ政権のアメリカ産米輸出増要求を背景に、アメリカ産米の国内市場での定着をめざしているのが現在の自民党・財務省・農水省です。
 1995年に始まったMA米輸入総数は2024年10月末までで2116万トン、うち主食用仕向けは172万トン(8%)だけでした。(図2)
 国産米の米価下落が続くもとで、外米の需要がほとんどないにもかかわらず輸入し続け、半数近くの968万トンがトン当たり2万円で飼料用に処理され、30年間で7000億円以上の財政をMA米処理に費やしてきました。
 特に、2021年までは年400億円程度であった財政負担が、22~23年では円安と穀物価格高騰で、年間で約700億円にも膨らんでいます。


アメリカ米をあてにできる保証はない

 交渉合意の詳細は不透明なままですが、(1)備蓄米をなし崩し的に廃止し、MA枠で増やすアメリカ米を備蓄用途として買い入れる、(2)アメリカ米で「小泉米」と同様のダンピング販売を継続して行い、「安い米欲しけりゃアメリカ米を」とばかりに、低価格米として市場に定着させようという一石二鳥をねらっているわけです。
 アメリカ・カリフォルニア州での生産量は約200万トン、うち35万トンを毎年輸入してきましたが、アメリカ国内での米需要も旺盛であり、輸出増の余力は25万トン程度が限界ではないかとみられます。
 なんらかの原因で需給ひっ迫が起きれば、アメリカ米をあてにできる保証などありません。
 米不足・価格高騰、米生産現場の疲弊という深刻な事態が進行している下で、計算づくで出された75%輸入増、アメリカ産米需要拡大、財政負担軽減のシナリオ。しかし、これは亡国と飢餓のシナリオです。
 二度と米不足を起こさないためには、国産米を思い切って増産し、国内産による十分な備蓄を行うことこそ必要です。


アメリカへの隷属と自民党政治からの脱却こそ

 日米合意には、トウモロコシ・大豆・エタノールなどの輸入を1兆2000億円増やすことも盛り込まれました。
 しかし、トウモロコシ・大豆の国内需要は、ほぼ飽和状態であり、アメリカからの輸入を増やすには、ブラジルなどからの輸入を減らすということにしかならず、アメリカ1国への輸入依存度を高めるだけで、食料安全保障リスクを高めることにしかなりません。
 2021年は水不足により、カリフォルニア州での生産量が大きく減少し、輸入価格も国産米を超す高騰と輸入減となり、米づくりの不安定さが明らかになりました。
 食料・エネルギー・軍事・外交など国の存続にかかわるすべての領域でアメリカに隷属・依存し、主権を放棄する自民党政治からの脱却を現実のものにしなければ、農業・食料も命と暮らしも守ることはできません。