アイコン 新聞「農民」

旬の味(2025年09月22日 第1667号)

 90歳代のおじが、スープの少し冷めるような比較的近い距離で一人暮らしをしている。冬が近づくにつれ、水道の凍結、ストーブの火の始末、玄関前の除雪等、大変になってきているが、「この家から離れたくない」と。施設に入るにしても、おじの年金額では、月々まかなえない事情もある▼介護保険制度は何のために作られたのか? 高齢社会に備えるふりをしているだけではないのだろうか。困っている人を助けてはくれない制度だと腹立たしくなっている▼利用料も制度でまかなえ、入居した本人も満足し、預けた家族も安心できる。人生を全うするのに、晩年は家族に迷惑かけたくないと、一人でがんばる姿をよく見るが、複雑な気持ちになることもしばしば▼病気に苦しまずに元気に長生きしてコロリと死ぬことを意味する「ピンピンコロリ」をスローガンにしている自治体もあったが、住民の健康を考えての取り組みがなされ、うらやましいと思う。老後のことは、市民も一緒に考えてつくる制度が望ましいのに。(麻)