旬の味(2025年09月29日 第1668号)
梨やぶどうの収穫も今まさに最盛期。収穫、出荷、観光案内、地方発送と、文字通り寝食を削る多忙を極める日々ですが、「今年も来たよ」と訪れるお客さまとの再会の喜びで、その疲れも癒されます▼地方発送をうけたまわる際には、まず伝票の文字に目が留まります。お客さまが一枚ずつ直筆で書かれたその字体から人柄や顔まで自然と結びつきます。逆に、顔を見ると、字体とともにお名前が思い出されます▼しかし近年は、パソコンで打ち出した宛て名が主流となってきました。字を書く習慣が薄れ、お客さまも高齢となり、伝票を書くことを負担に感じる方も増えました。私が代わりにパソコンで打ち出すと、「助かるよ」と喜ばれることも少なくありません▼効率や省力化を考えれば、この方法は確かに便利です。けれども、実りの箱に活字の伝票を添えるたびに、かつて目にした筆跡が少しずつ失われていくことに寂しさを覚えます。人の手を経た文字には、人と人とをつなぐ力があるのだなあと感じ入る季節です。(羊)

