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初めての米づくり 挑んだ24歳兼業農家(2025年09月29日 第1668号)

宇都木(うつぎ) 恒太さん 静岡県焼津市農民組合
地域の課題に向き合い来年も

 静岡県の焼津市農民組合に所属する宇都木恒太さん(24)は、今年初めて米づくりに挑戦しました。藤枝市に住む宇都木さんは隣の島田市に団体職員として勤務しています。その島田市にある3カ所の田んぼを今年借りて(合計約60アール)、コシヒカリを栽培しました。

「思い通りにはいかないな」

「藤枝市の農家や行政が取り組んでいる有機給食に自分も関わっていきたい」と話す宇都木さん

 収穫の秋を迎えて宇都木さんは、「やらないといけないことが、こんなにあるのか。これが率直な実感です」と話します。「田植えや稲刈り、畦の草刈りという作業は何となくイメージできても、実際にそれをするために付随する作業が何倍もある」。自宅から田んぼが離れており、刈り払い機を運ぶだけでも大変でした。「職場への行き帰りの朝晩に田んぼに立ち寄って、『草を取らないと』とか『あそこを補植したい』と思っても、その場ですぐ作業ができるわけではないので、なかなか思い通りにはいかないな、という思いです」
 米づくり1年目を振り返ると、春先の苗の確保から苦労し、梅雨時期に雨がほとんど降らず、ジャンボタニシも旺盛、出穂後にイノシシに荒らされ、収穫直前の9月5日には大雨で田んぼの一部に土砂が入りました。

心込めた産直米来年への抱負も

 それでも約1200キログラムを収穫しました。宇都木さんは言います。「イネを育てることは、離れて住む子どもを見守るような感覚で、初めてやって分かったことも多い。来年に向けて考えを巡らせています」
 周囲の人たちの支えにも感謝します。「機械を貸してもらったり、こちらから頼まなくてもコンバインを田んぼまで運ぶ段取りをしてくれたり、『あなたが倒れると私も困るから』とベテラン農家さんが草刈りをしてくれたり。地域を荒らしたくない、という切実な思いを皆さん持っている。だから自分も『来年はもっとがんばろう』と思っています」
 心を込めて作った米は、焼津市農民組合と地元の新日本婦人の会との産直米として出荷します。