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被爆の実相広げ平和な世界を 原水爆禁止世界大会(長崎)に参加して 若者の思いは(2025年09月29日 第1668号)

 被爆80年の原水爆禁止世界大会では、被爆の実相を広げ、「核兵器のない世界を」と誓い合いました。8月9日の長崎大会に参加した、参加者の思いを紹介します。

 

自らの言葉発信し広げたい
東京都 鈴木 日菜さん(豊島区)

 高校生時代、国際関係に興味を持ったことがきっかけで、核兵器廃絶を求める署名活動に取り組んできました。
 平和活動を通して知った日本の戦争加害の歴史、国内外の被爆者の証言を聞いて、すごくショックでした。
 平和学習のサポーターさんが、「知った責任」と話されていて、知ったからには周りに伝えていかなければならないと強い使命感をもちました。
 私は、戦争や被爆があったことの風化を心配しています。周りの知人は、8月9日が長崎に原爆が落とされた日だとすぐにはわからない人も少なくありません。
 私たちは、被爆者から直接証言を聞ける最後の世代です。風化を防ぐためにも、一人一人が得意なことで続けることが大事だと思います。
 私にとって、平和な社会を考えて行動することは、特別なことではなく、多くの青年がアイドルに興味を持つように、私は平和な社会に関心をもっただけなのでモヤモヤすることもあります。
 私の世代は、SNSを使いこなせる世代です。興味がない人にも、私の投稿がきっかけで、平和について考える入り口になるかもしれません。
 この大会では、多くのいろいろな世代と交流する機会がありました。東京の大学で平和活動をしていると孤独だと感じることもあります。
 実際に長崎を訪れたことで、「どうやったら若い人にも平和の大切さを伝えられるか」とアウトプットの方法をより実践的に考えながら参加することができました。
 「ビリョクだけれどムリョクではない」という言葉があります。ウクライナやガザなど世界各地で戦争が続く今日の世界で、いまこそ世界中のビリョクを結集させる必要があります。戦争映画を見る、資料館に行く、それを誰かに話す、どんな小さいことでも良い。それはムリョクではありません。平和の思いは連鎖していきます。皆が安心して暮らすことのできる平和な社会へ向けて一歩一歩行動していきたい。

 

環境への影響が懸念される
千葉県 石井 幸恵さん(船橋市)

 世界大会への参加は、初めてでした。家業の空調設備会社で働きながら、千葉土建組合・主婦の会でも活動しています。組合で取り組んできた平和学習や核廃絶署名を集める活動をきっかけに、今回はじめて2人の子どもと被爆地・長崎を訪れました。
 減農薬や環境問題に関心があったことから、会社の空き地で、日本ミツバチの養蜂を始めました。将来は事業化も模索しています。
 世界大会では、被爆者の証言を直接聞き、同じ日本でもこんなにひどい惨劇があったんだと、はじめて原爆の恐ろしさを痛感しました。環境への関心があるので、核爆発で大量の放射線が放出され、農産物への被害はどうだったのか、それを食べた方の二次被害はなかったのか、とても心配になりました。
 核兵器で他国を威嚇し、強さをアピールする国がいまだにあります。
 私は、国や地域が違っても、同じ人間なのだから、いのちを大切にしないといけないと改めて思います。子どもたちの平和な未来を願うと、もう二度と、世界のどこでも同じことを繰り返してはいけないと思います。そのために、地元でも学習会を開いて、学んでいきたいです。

 

被爆者の言葉に重み感じた
大阪府 田中 綾恵さん(八尾市)

 昨年、広島大会に参加し、長崎のことも現地で学びたいと2回目の参加です。
 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中煕巳さんの被爆証言で、倒れたガラス戸が覆い被さって命が助かったと知りました。原爆がさく裂した瞬間の条件と偶然が生死を分けることになった。そして、生き延びた被爆者が、リアルに実相を語り続けてくれていることに言葉の重みを感じます。
 夏の参議院選挙では、候補者などから核武装や軍事力強化が語られ、その道が必要だという世の中の流れが、意図的に作られたと感じました。
 そうした主張を信じてしまう人もいる一方で、「武力で平和は作れない」と真剣に模索し、声をあげる若者も増えていると感じています。この大会でも、多くの青年が戦争や被爆の被害と真剣に向き合い、継承する世代として、広げるためには何ができるのか模索していて、とても大切な時間だと思いました。
 ある被爆者が青年に対し、「困難もあるが、未来は捨てたものではない。若い人が平和のバトンを受け取ってくれていることがうれしい」と話されたことが印象的でした。社会を前向きに変えようという流れも着々と生まれています。その声を大きくしていくことは、直接戦争を経験していない私たちにもできることです。
 学んで、語って、広げることで社会は動かせると思います。身近な人に被爆者の声を伝え、地道にコツコツ続けることが、平和な社会をつくることにつながると思います。