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ものづくりに込めたこだわりと柔軟性 愛知農民連会長 伊藤政志さん(2025年10月06日 第1669号)

営農も運動も前向きに

キャベツの定植をする伊藤さん

 「体が動くまでやれることをやりたい」--。愛知農民連の会長、伊藤政志さんは自身の営農や農民連の活動についてそう語ります。
 愛知県豊橋市豊清町でキャベツ2・4ヘクタール、タマネギ80アール、水田60アールを栽培する伊藤さん。現場を訪れた9月中旬は、ちょうど冬キャベツ(寒玉)の定植をパートナーの知子さんと行っていました。
 キャベツの収穫量全国2位の愛知県。渥美半島の付け根に位置する豊橋市は県内主要産地です。地域のキャベツ栽培は「セルトレイ苗」での定植が主流です。ハウスで育苗した8~10センチメートルほどの小苗を専用機械で定植しますが、伊藤さん夫妻は露地で育てた15~20センチメートルほどの大苗を専用機械で定植する「地床育苗」を実践しています。「これをやると採苗や根切り作業の手間は出るが、小苗で植えるより状態がそろい、その後の減農薬になる。何より毎年かかる経費が抑えられる」
 地床で育てると幼苗が暑さでダメになることが近年増えてきたそう。対策として「卵殻」と「ホワイトカリウ(クリオン)」を畝に散布する方法を人から聞き、いま実践中です。「これをすれば養分の補給だけでなく、地表を白くすることで表面温度を下げることができるみたいで続けている」。以前は自家製堆肥をつくり畑にまいていましたが、父親が亡くなって以降はその労力をさけず、いまは夏場に生えた畑の草をフレールモア(トラクターに取り付けて使用する農業機械)で倒し、一週間後にすき込む手法をとっています。「どんなやり方が自分たちに合っているのか。人から聞いたり本を読んでは試しているよ」
 柔軟な姿勢で営農を続ける伊藤さん夫妻ですが、“ずっと変えずに実践していること”があります。それは、毎作の「土壌診断」と「残留農薬検査」です。土壌診断は地元の農協に依頼し、足りない栄養素があればその都度補給するようにして経費を抑えます。農薬の残留検査は、農民連食品分析センターに依頼し「残留農薬は検出されなかった」ことを確認してきました。「これを毎作続けているから、いろんな栽培方法を試せるし、自信を持って出荷できる」と伊藤さんは胸を張ります。
 営農にも運動にも前向きな姿勢で臨む伊藤さん。「体が動くうちはやれることをやって、農民連や愛知の農業を発展させたい。やれることをやって失敗したら『そのときは仕方がない』と妻が言ってくれる。当面は11月15日に豊橋市、来年3月に名古屋市で開催予定の『百姓一揆』の成功に向けて課題を克服していく」