旬の味(2025年10月27日 第1672号)
もうかる農産物を育てるか、必要な農産物を育てるか。新規就農者から「どんな作物がもうかりますか」と尋ねられることがよくあります。確かに、高値で取引される農産物には夢があります。努力が実ればやりがいも大きく、次の挑戦への励みにもなります▼けれども、農業はいつも思い通りにはいきません。天候や市場の波で収入が左右され、資材費の高騰にも頭を悩ませます▼一方で、伝統野菜や加工用の作物など、派手さはなくても地域の食卓を支える作物もあります。価格は控えめでも、「これがないと困る」と言われると、やはり作ってよかったと感じます▼農業は、もうけだけでも理想だけでも続けられません。土地や気候に合った作物を選び、地域の暮らしに寄り添うこと。それが結局一番の安定につながるのだと思います▼心を込めて育てた作物が誰かの食卓に届く。届けられた農産物を受け取り、その喜ぶ姿を思い浮かべるとき、農業の原点を改めて感じます。今日もその思いで畑に立っています。(み)

