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だまされない 国民を欺く「増産」報道 石破内閣も高市内閣も“需要に応じた米生産”に変更なし

所得補償・価格保障実現を

 農水省は10月31日開催の食糧部会で「令和7・8年の需要見通しの変更」「令和8・9年の需要見通しの設定」を諮問し、了承されました。24日に開かれた自民党の農業構造転換推進委員会・農業基本政策検討委員会に示され了承されたものです。

増産してないのに「増産」という異常

各地で稲刈りも終わりました

 9月の指針からの「需要見通し」の変更点は、2025年産主食用米生産量が、廃止になった「作況指数」に代わり使用された「作況単収指数」に基づき「728~745万トン」から「748万トン」に増え、「908~926万トン」とされていた供給量の合計が「926万トン」に整理され、需要量「697~711万トン」は変更がなく、26年6月末在庫が「215~229万トン」に見直されました。(表1)
 春から急増した輸入米といまだに流通していない「小泉備蓄米」の影響により、昨年のような極端な「早食い」も起きず、新米の出回りも停滞しています。
 このようなもとで、26年6月末在庫「229万トン」という見通しで、米価暴落の恐怖をあおり、生産者に26年産作付けに向けた不安を拡大しています。この結果、鈴木新農水大臣は、改めて「需要に応じた生産」を強調したにすぎません。
 そもそも、米全体の作付面積が増えてもいないのに「増産」ということ自体がデタラメです。石破前首相・小泉前農相が増産を指示したかのような報道にも問題があります。

25年産備蓄米の買い入れを早期に

 主食用米が増えたのは、飼料用米・加工用米・輸出米などからの転換(表2)と、25年産備蓄米入札を中止したままのため、備蓄米生産を予定していたものを、政府が勝手に主食用に算入したにすぎません。小泉前農相が機能不全に陥らせた備蓄水準の早期復元が求められているのに、買い入れ責任を放棄したうえで「増産」というのはあまりにも無責任です。
 さらに、主食用米の生産量748万トンから、ふるい下米というくず米を除けば715万トンであり、米穀業界にも「増産」との認識はありません。来年産米の作柄いかんでは、米不足、価格高騰、外米依存になる危険水域の米生産の実態にも変わりはありません。

市場任せの「需要に応じた米生産」に固執

 石破前内閣と高市内閣で、米政策に変更があるかのような報道が目立ちますが、どちらも「増産」に向けた政策は持たず、生産者任せであり、「需要に応じた米生産」の推進になんら変化はありません。
 コロナ禍での米需要の消滅から生まれた市場在庫を、過剰在庫減らしのために50万トン以上も減産して需要に満たない供給量となった結果、米不足と米価高騰を招き、備蓄運営ルールを変更してまで「需要に応じた生産」の失敗を隠蔽するために「放出」せざるをえなかったことに反省がないのも以前と全く同じです。
 しかも、小泉農相は、備蓄米「放出」で、大手流通資本には便宜をはかりつつ、米価問題で、生産者と国民の対立をあおり、外米需要を拡大し、財務省の財政制度等審議会答申の通り、MA(ミニマムアクセス)米の主食利用、水田活用交付金予算カットなど、日本農業破壊に向けた先導役となりました。
 鈴木農相も、備蓄米のMA米利用、民間備蓄の推進など財政審答申通りの見直しを進め、米の安定供給を危うくし、国内で増産するのではなく、外米も含めた「需要」に応じた米生産にさらに変質させようとしています。

公的需給コントロールの発揮を

 政府・マスコミのウソ・デタラメを告発し、米と農業を守り、食料自給率向上をめざす農政への転換を実現するため、農家への所得補償と価格保障の実現、政府備蓄米の早急な復元のために生産計画を作成し、確実に買い入れを行うなど、公的需給コントロールを発揮することが求められます。
 今日の政治情勢の変化を生かし、国民合意形成の大運動を、すべての農家と国民が連携して大きく広げることが緊急に求められています。