全国の農高生が活動の成果を発表! 日本学校農業クラブ全国大会 新聞「農民」編集部 村上 結(2025年11月17日 第1675号)
農学の知識と技術で地域振興への夢描く
プロジェクト発表会を視聴して
発表する代表校の皆さん
10月21~23日に「日本学校農業クラブ全国大会」が開催されました。
「日本学校農業クラブ(FFJ)」は、47都道府県で農業を学ぶ高校生と関係職員で構成される農業教育の全国組織です。毎年秋に行われるFFJの全国大会は、今回で76回目を迎えるそうで、今年は東京都・神奈川県・山梨県の1都2県にまたがり開催。私は、22日に東京都府中市で行われた「プロジェクト発表会」を見に行ってきました。
同発表会は3つの分野グループで構成され((1)農業生産・農業経営、(2)国土保全・環境創造、(3)資源活用・地域振興)、全国9つのブロック大会で最優秀賞に選ばれた27チームが出場。大会ルールは厳格に定められ、競技性も高く、会場の「府中の森芸術劇場」ホール内は常に緊張感に包まれていました。
その中で高校生の皆さんは生き生きと日頃の成果を発表。宮城県のチームは、「肥料が高くて買えない!」という地元の水稲農家の声から「施肥量を減らしても収量・味が変わらない栽培法」を研究。田植え時にわざとイネから離して施肥し、最初の3週間を“無肥料状態”に置くことで根を伸ばさせ、元肥が追肥として機能。結果、肥料コストは従来の約80%削減で収量は15%増加。この栽培方法を確立するために、狙った深さに施肥できる装置を自分たちで考案し、田植え機に装着できるように形状や素材を開発した、というのだから驚きです。
印象的だったのは「厳しい経営を強いられている地域の畜産業を守りたい」という思いで研究に取り組んだチームが多かったことです。
飼料費削減と資源活用を両立
三重県のチームは、自校の採卵鶏飼育の中で、「飼料費削減と地域資源の有効活用」として「竹間伐材」導入を研究。サイレージ化により長期保存を可能にした上で、竹粉飼料の給与試験を実施。エサ全体の10%を竹粉で代替しても、産卵率や卵重、卵殻強度に悪影響は出ず、卵黄成分はむしろ向上。農家規模での試算では年間およそ210万円の飼料費削減となり、県の畜産課と地元企業が連携し、竹の切り出しから鶏への給餌までをシステム化し、地元の養鶏農家へ普及を進めているそうです。
広島県のチームは、地域の特産であるオリーブの搾りかすを自校の養豚飼料に活用。焼却処分していた搾りかすを有効利用し、エサの穀類15%削減に成功しただけでなく、肉質改善にもつながり最高ランクの「極上」に格付けされたことを発表しました。
地域課題に挑戦世界を変える!?
一番感嘆した発表は青森県のチームによる、「天然海面活性剤による除草剤の『泡』散布」アイデアの研究です。
日本で大量に消費される除草剤は、実は農地よりも道路などに多く使用され、ミスト散布での飛散によるさまざまな問題が自治体を悩ませていると知ったメンバー。使用量削減と飛散抑制を目標に、「泡散布して留まる除草剤」の開発に着手。
注目したのは、身近に生えている「ムクロジ」「サイカチ」や「セイタカアワダチソウ」という泡立ち成分を持っている、天然の界面活性剤。よりち密な泡となるよう実験を重ね、一般的なグリホサート系茎葉処理剤50倍液に5%添加して散布すると、泡はしっかりと維持され除草剤効果も確認。使用量は55%減少し、飛散距離も73%抑制され、散布7日後の土壌細菌数はミスト散布の場合よりも51%多い、という結果になったそうです。
実用化を見据えて複数の企業が来校し、グーグル社がアドバイザーとなり、途上国への紹介活動も進行中とのことで、もう驚きしかありません。
他にも野菜、果樹、花き、森林や海の再生、不耕起栽培など多彩な研究テーマでの発表が続きました。どのチームからも、「国内の農業の現状を見つめ、地域経済の活性化につなげたい」「持続可能な栽培や経営方法を確立したい」という強い意志を感じました。そして、その探求の原点は普段の授業で学ぶ「野菜」や「畜産」、「農業と環境」などの各科目です。
志と実践に感動農業選ぶ社会に
現状を把握・分析し、課題を抽出し、仮説を立て検証する。これを根気強く繰り返すことが、地域社会のこれからを明るくする--。農業を学ぶ高校生の志と実践に大きな勇気をもらいました。
FFJによると、東京都内の加盟校は8校で、クラブ員は2100人に及ぶそうです。彼らや全国の農高生は高校卒業後にどんな道を選ぶのか。願わくば、日本の食と農や一次産業に関わる道に進んでほしいと思う一方で、若者が魅力を感じ選択する道としての農業が目前に広がっている、そんな日本社会をつくることが農民連にも求められていると感じました。

