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輸入拡大圧力に負けず、国内産増産に支援を(2025年11月17日 第1675号)

ポテトチップスから残留農薬
農民連 食品分析センターが調査
ジャガイモで使用できない成分検出

 農民連食品分析センターは6月、市販のポテトチップス8製品の残留農薬を調査し、6製品から残留農薬が検出されました。(表)
 検出されたのはネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)と、除草剤のクロルプロファムなどです。クロルプロファムはアメリカなどでは発芽防止剤として収穫後のジャガイモへの使用(ポストハーベスト農薬)が認められています。原産国は製品や原料の最終加工地であり、その原料のジャガイモはアメリカ産の可能性もあります。
 これまでも輸入フライドポテトからクロルプロファムが検出されていましたが、2006年からはアメリカの要請でポテトチップス加工用の生ジャガイモの輸入を認める緩和が行われ、ポテトチップスからも検出されたと考えられます。
 農民連食品分析センターの八田純人所長は「クロルプロファムは、日本ではジャガイモへのポストハーベスト使用は認められていませんが、海外でポストハーベスト処理されたものは輸入が認められています。これまでも輸入フライドポテトなどから摂取する機会はありましたが、多くの人が食べるポテトチップスからも検出されたことで、暴露機会が増加することになります。今後も調査対象を増やすなど監視を続けていきます」と話しています。

ポテトチップスの原料は
需要増に追いつかない
国産ポテチ用ジャガイモの生産量

 ポテトチップスに関連するジャガイモの国内生産と輸入の状況はどうなっているのか。
 国内生産の状況を見ると、ジャガイモ全体の国内作付面積の推移は、5年前と比べ全国で約3500ヘクタール、北海道で約900ヘクタール減少しています。しかしポテトチップス用生ジャガイモの生産は、気象状況などにより年ごとのバラつきはあるものの、北海道産、都府県産ともに微増または横ばい傾向です(図、農林水産省「ばれいしょをめぐる状況について」から)。これについて農林水産省は、「国内生産は増加しているものの、近年ポテトチップス用などの需要増加に十分対応できず、加工メーカーは不足分を輸入に頼らざるを得ない状況」としています。
 一方で輸入はどうなっているのか。前述した図の「輸入原料」は、「アメリカ産ポテトチップス用生ばれいしょ」の輸入量を示しています。
 図の「輸入原料」は、例えば24年度を見ると約3万9000トンで、供給量全体の約48万5000トンからすると、あまり多くないように思えますが、これには注意が必要です。あくまでもこれは、「ポテトチップス用生ばれいしょ」の輸入量であり、「冷凍・粉・フレーク・マッシュポテト・乾燥」などの状態で輸入されたものは含まれていません。

生ジャガ原料ではないポテトチップスがある!

 これら、生ジャガイモ以外の「ばれいしょ関連品目」は主にアメリカ、カナダ、中国などから輸入され、その総輸入量は23年では118万2000トンにもなります(生いも換算、財務省「日本貿易統計」から)。国内で販売されているポテトチップスには、これら輸入された「ばれいしょ関連品目」を原料に製造された商品も含まれているのです。

トランプ関税交渉 米に続いて・・・
ジャガイモも輸入検討?

 トランプ関税交渉でアメリカ側は、米・トウモロコシや大豆の輸入拡大を日本に約束させたほか、4月の交渉初期にはジャガイモの輸入拡大を迫っていました。
 アメリカ産ジャガイモは現在、日本への輸出がポテトチップスなど加工用に限定されています。その理由の一つがジャガイモシストセンチュウという病害虫の発生にあります。ジャガイモシストセンチュウは、土の中でジャガイモの根から養分を吸収して、収穫量を大幅に減らしてしまう害虫です。
 2006年の加工用限定ジャガイモは、輸入期間も2月~7月に限定されました。日本での加工施設も海岸沿いの港頭地域内になければならないとされていることから、カルビーは広島工場と鹿児島工場にほぼ限定するなどの規制を行い、病害虫のリスクを減らしてきました。
 しかし、20年2月に、農水省は、アメリカ産のポテトチップス加工用生鮮ジャガイモの通年輸入を認める規制緩和を行いました。
 さらにアメリカの要求を受けて、ポテトチップス用に限らない生食用ジャガイモの全面輸入解禁に向けて協議を始めています。生のまま輸入するとセンチュウが潜んでいる場合があり、それを種イモに使うとあっという間に日本中に広がるおそれがあります。
 加えて、厚生労働省は20年6月、ポストハーベスト(収穫後)農薬として、動物実験で発がん性や神経毒性が指摘されている殺菌剤ジフェノコナゾールを、生鮮ジャガイモの防カビ剤として食品添加物に指定しました。併せてジフェノコナゾールの残留基準値を改定し、ジャガイモについてこれまでの0・2ppmを4ppmと20倍に緩和しました。

外来害虫の被害拡大
生ジャガ輸入するな!
ジャガイモ生産農家 原田 美智雄さん(北海道小清水町)
生産農家が輸入の踏み台に

広大な畑でジャガイモの植え付け

種イモの準備中

 畑25ヘクタールのうち8ヘクタールでポテトチップス用のジャガイモを作っています。ここ数年はカルビーの契約価格も少しずつ上がってきていたのですが、今年は猛暑で収量が減少。取れたジャガイモもでんぷん含有量が基準値以下となる人が半数程度おり、大幅な収入源となっています。高温の影響は来年以降も続くことが予想され、単価は少し下がってもでんぷん原料用のジャガイモ作付けに切り替える人が増えており、これ以上、生産量が増える見通しは立ちにくい状況です。

センチュウ被害で生産者は苦悩

 北海道のジャガイモ生産者は、ジャガイモシストセンチュウの被害に苦しんでいます。1972年からジャガイモシストセンチュウの拡大が見つかり、被害を受けていたところに、2015年にはジャガイモシロシストセンチュウの侵入が近隣の網走市内で見つかりました。
 ジャガイモの収穫機は比較的小型の1畝用のものでも1700万円ほどと高価です。収穫機を購入したばかりの30代の農家が、今年シストセンチュウの被害にあいました。収穫はできず、消毒等の対策が今後必要になります。ほ場も他の作物への転換が必要で、買ったばかりの収穫機も“いわくつき”のような扱いを受けて売却もままなりません。購入代金の借金が残ってしまいます。
 さらにジャガイモの大産地でシストセンチュウが発生すると、最初に発見された農家への風当たりが厳しくなり、最終的には自死に追い込まれるケースも起こっています。
 しかし、ジャガイモシロシストセンチュウはもともと日本におらず、外国から持ち込まれたのは明らかです。輸入品の管理もまともにできず、そのツケを農家に押しつけている状況で、まるで農家が金もうけの踏み台にされていることに怒りを感じている生産者は少なくないと思います。
 「対策できないのならば生ジャガイモは輸入するな!」というのが生産者の思いです。

危険すぎるアメリカ産ジャガイモ
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表
天笠 啓祐さん

 アメリカ産ジャガイモは、輸出の際に害虫対策に加え、日持ちや芽止めなどを目的に農薬を塗る必要がありました。ポストハーベスト農薬です。しかし、日本ではこのような行為は認められていません。そのため日本政府は農薬を食品添加物と言い換えて使用を認めました。
 この異例の措置は、かんきつ類の輸出から始まりましたが、2011年にジャガイモを対象にフルジオキソニルが、20年にはジフェノコナゾールが認められました。前者は、遺伝子に突然変異を起こす毒性が問題になっている農薬であり、後者は、食品安全委員会での評価でも、肝臓がんをもたらす危険性が指摘されていながら、アメリカEPA(環境保護庁)での発がん性評価で低いとして、認められました。

遺伝子組み換えとゲノム編集が

 もうひとつ、アメリカ産ジャガイモには大きな問題があります。それが遺伝子組み換えやゲノム編集の普及で、いずれも開発したのはJRシンプロット社です。遺伝子組み換えジャガイモは、厚生労働省が17年に承認しました。このジャガイモは発がん物質を低減するなど健康に良いことを売り物にしていますが、新たな毒素が作られるなど安全性で深刻な問題があると指摘したのは、このジャガイモを開発した同社の研究者です。このジャガイモを外食産業が使えば、表示はなく避けられません。
 ゲノム編集ジャガイモも輸入が始まろうとしています。消費者庁が24年にこのジャガイモの届け出を受理して、流通が可能になりました。小粒ながら粒数が増え、収量増になることを売り物にしています。ゲノム編集作物もやはり安全性に大きな問題を抱えながら、安全審査もなく、食品表示も必要ありません。
 アメリカ・トランプ政権は対日要求を強めていますが、ジャガイモでも、ポストハーベスト農薬を食品添加物として扱うと表示義務が生じるため、それが貿易障壁に当たるとして、その表示義務撤廃を求めてきています。同政権の無茶な要求のエスカレートが、ただでさえ危険なポテトチップスの安全性を、さらに危険にしています。

子どもも好きなお菓子安全なもの食べ続けたい
2人の子を持つ母親
浅野 朱乃さん(新日本婦人の会愛知県本部)

 輸入ジャガイモを使ったポテトチップスから残留農薬が検出されたと聞いて、率直にビックリしました。ポテトチップスの原料は国産だと思っていたので、輸入と聞いて「あれ?輸入されてるの?」とも思っています。
 私は農薬の種類には詳しくないですが、農薬は健康被害があるからこそ基準値があるのだと思います。とくに子どもはおとなに比べて発達途中で、子どもが残留農薬を摂取してしまうと、おとなよりも影響が大きいのではないかと、率直に心配です。

国産買えるよう生産者に支援を

 ただ、消費者としては国産を使ってほしい反面、価格が高くなってしまうのではと、正直なところ心配でもあります。できるなら食べ物はすべて国産で、もっと言えば地産地消がよいですが、輸入食品は価格が安いので、買った後で産地を見て「国産じゃないんだ!」ということも何度もあります。
 多くの人が本当は国産がいいけど、買いきれないなかで、日々、葛藤しながら買い物しているのが現実だと思うのです。
 だからこそやっぱり、消費者が安全なものを、安心して食べ続けられる価格になるように、所得補償など国が生産者をしっかり応援するしくみを作ってほしいです。
 先日、農民連と新婦人の稲刈り交流会があったのですが、改めて「食べ物って大事だな」と思って帰ってきました。食べ物って人を作るし、生活も変わると思います。
 ポテトチップスは子どもからおとなまで、多くの人が食べるお菓子です。安心して食べられるお菓子であり続けてほしいです。