神奈川 産直センターと県連が連携強めて(2025年11月17日 第1675号)
新規就農者や生産者を訪問
会員10人読者7人ふやす
産直での要求・悩みに応え出荷での共同を提案も
都市農業のメリット生かし前進したい
神奈川県農民連は、2月の県連大会以降、アンケートなどで農家を訪問し産直要求に応える提案を通じて、10人の新組合員、3人の新聞「農民」新読者を、また9月から数回行われた農業・食料についての学習会で4人の新読者を拡大しました。
極度に都市化した神奈川県では、農協の販売は、大規模直売所経営が中心です。そのため、県内に散在する主業農家の販売経路は、量販店との個別契約などに依存する傾向があります。
しかし、就農して間もない農家には利用しづらいという問題があります。ここから、生産を安定して支える出荷先=産直への要求があり、農民連の産直に参加することの提案でそれに応えることができました。
アプローチの対象を広げて
小田原のみかん農園で梅津さん
小田原のミカン園で福祉施設の人たちと交流
これまで農民組合員は代々親元就農を続けてきた農家が中心で、新規就農者へのアプローチが課題となっていました。8月~9月に産直センターと農民連が連携し、県内の生産者、新規就農者を訪問し、懇談する中で産直出荷での共同を具体的に提案したことで、会員拡大につながりました。
今年、農民連の仲間に加わった梅津俊さん(43)は産直組織「かなちょく」(大和市)の代表取締役。7年前から自らも小田原市でみかんを栽培しています。16年前に神奈川農畜産物供給センターに転職し、産直事業に携わってきました。2023年に宅配・卸売事業を新会社「かなちょく」に移管し、事業を継続しています。
梅津さんは「小田原の近隣の農地は若い人がいなくて、放棄地も増えています。イノシシやカメムシ被害も深刻です。これでは日本の農業は守れない」と危機感を募らせます。
神奈川の「かな」と産直の「ちょく」が名前の由来の「かなちょく」は、生産者と消費者をつなぎ、地元の農産物を宅配や卸売りなどの形で届け、神奈川の農業と環境を守ることをめざしています。
神奈川県の人口は約920万人と全国2位である一方、神奈川の農業の耕地面積は全国で45位。しかし、小田原の梅や三浦の大根・キャベツのほか、小松菜、キウイフルーツ、みかんや湘南ゴールドなどのかんきつ類は、全国でも魅力的な農産物となっています。
梅津さんは「そんな神奈川の魅力ある農産物を新鮮なうちに消費者に届けたい。そのために出荷先を確保することが大事。出荷先が増えれば生産者も元気になり、集まってくることで、神奈川の農業を元気にしたい」と展望します。
農業体験も実施 産直の魅力発信
生産者と消費者の思いが詰まった「身土不二」
こうして出荷先を求めて「かなちょく」に集まってくる農業者に、農民連への加入を呼びかけています。10人の新会員の大半は30代、40代の若者です。
梅津さんの農場は、体験農園の場にもなり、神奈川の生協や自社の宅配会員、東京の新日本婦人の会会員、県内の社会福祉施設の障がい者、スタッフのみなさんを招いて、みかんの収穫などを体験してもらっています。
「かなちょく」では、どこで、どのような人が、どのように農産物を作ったのか。生産者の思いを物語として農産物と一緒に届け、消費者の記憶に残るよう、その表現にもこだわっています。産直ボックスに同封する会報紙「身土不二」は野菜と生産者の紹介、消費者の声を紹介しています。
梅津さんは「全体の供給量を増やすために、生産者をもっと増やさなければいけません。その点でも、産直に出荷する農民連の仲間ももっと増やしていきたい」と意気込みます。
農作業や栽培情報が欲しい
神奈川県農民連の高橋康雄会長は、「新規就農者は最初、農作業や栽培のやり方に加えて、情報や仲間が欲しいという悩みを抱えています。出荷先を確保し、生産者や消費者と交流し、一緒に学べる産直は、こうした悩みに応えることができます」と産直のメリットを語ります。
事務局員の相次ぐ逝去など事務局体制が一時期崩れ、これまでさまざまな活動や仲間増やしが停滞してきた神奈川県連ですが、個々の会員は高齢化や後継者不足に悩みながらもそれぞれの地域でがんばってきまし
た。
昨年2月の県連大会で、事務局体制を確立し、要求を農家から聞き取り、行政に届けようと足を踏み出しました。
高橋会長は、「神奈川の農業は都市農業という特徴もあり、消費者とも距離が近い。こうした神奈川ならではのメリットも生かしながら、組織の前進を図りたい」と決意しています。
県連は11月に対県交渉を行います。要求アンケートで生産者の声を集め、さらなる読者拡大へも取り組んでいきます。

