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人権守らず、被災者守れない 災害対策全国交流集会2025(2025年12月01日 第1677号)

石川・金沢市で開催

液状化被害の残る内灘町も現地調査

柱の位置にあった縁石の角が
矢印のように動きました

 災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会(全国災対連)は11月9日、「能登半島地震から678日・被災地で語り合う教訓と課題『災害対策全国交流集会2025』」を石川県金沢市(オンライン併用)で開催しました。
 集会には全国災対連に加盟する組織やボランティア参加者等から現地参加72人、オンライン参加63人、あわせて135人が参加しました。集会後には液状化現象の被害が大きい内灘町の現地調査を実施しました。
 主催者あいさつで秋山正臣代表世話人(全労連議長)は、「災害はいつ起きるかわからない。そのために平常から備え、発生時の避難方法等を確認しておく必要がある。自治体業務の民間委託が進み正規職員が減らされ、経験・知識豊富な人材も少なくなっている。同時にデジタル化が進められているが、それでは住民の命を守ることはできない。今すべきは非正規職員の正規化、民間委託業務の再公営化など公的な役割を発揮できる体制の構築であり、公共の再生を図ることである」と述べました。

行政の防災計画 人権意識欠いた

報告する黒梅事務局長

 講演では能登半島地震被災者共同支援センターの黒梅明事務局長が「住み続けられる復興をめざす」と題して講演しました。
 黒梅さんは冒頭、「人が住むのに住居、生業、地域コミュニティーは不可欠で、人権・福祉(幸せ)の原点です。住み続けるのは基本的人権であり、人権を守ろうとしない政治を変えなければ被災者は救われない」と指摘。
 能登地震での劣悪な避難所やコミュニティーを分断する避難、支援の情報もインターネットが使えない人は入手できず申請すらままならないなど、行政の防災計画は人権意識を欠いていることを批判しました。
 また仮設住宅も従来型のプレハブ仮設は、防音・断熱材も収納庫もなく、レンダー取り付けや建具留めができない、囲いもなく洗濯物が丸見えという環境です。
 被災者生活再建支援法は支援金額が不足し、もともとの集落もがけ崩れ危険区域と指定され、住み慣れた土地での再建が困難になっていること、資材高騰と大工不在で再建の見通しが立たないのに、2年で仮設を出る誓約書を入居時に書かされ、医療費の減免も6月で終了するなど、被災者に冷たい姿勢が人口流出と災害関連死の増加を招いていることも黒梅さんの報告から明らかとなりました。

守るべき能登の特徴的歴史風土

 黒梅さんは「人権を守ろうとしない政治を変える必要がある」と述べ「守るべきは能登の特徴的な歴史風土であり、国の責任による大規模で徹底的な復興施策だ」と訴えました。
 また、国の棄民政策の中でも力強く立ち上がる地域住民の取り組みも紹介。穴水町では、住民が要求を議会に訴える手作り新聞を継続発行し、町議会を動かしていることや、兼業農家を中心とした被災地住民が団結して自主的に復興し、災害公営住宅としても使える木造仮設を地域内に建設させるなど、地域への強い愛着心や民主的な共同運営が復興の力となっていることも示しました。
 集会後は内灘町の液状化被害を調査。地元のみなさんから、液状化で波打ったままの地面や「側方流動」で大きくずれた土地などの状況の説明を受けました。