政府の責任で食料支援制度を(2025年12月01日 第1677号)
米高騰対策に各地でおこめ券 クーポン券など支援広がる
欧米では食料支援充実
政府が2025年補正予算に盛り込む「総合経済対策」で「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」(重点交付金)を拡充し、米商品券の活用を盛り込む方針が示されています。
これまで農民連は、政府に対して米不足の解消とあわせて、価格高騰対策として食料支援制度の創設を要求してきました。しかし政府は「困窮者支援は福祉であって農政の枠外」と拒否しています。
今回、自治体への丸投げや財源が一時的な重点交付金にとどまるなど、不十分ではあるものの、「米が買えない」という声が政府を動かした面があり、きちんと機能すれば米の購入がままならない方々の支えになるほか、需要拡大にもつながります。
多くの自治体が臨時交付金活用
この間、住民要求を背景に、国の助成を活用して多くの自治体が、地域限定の米クーポン作成や地場産米配布などに取り組んでいます。その中には、全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)が発行している「全国共通おこめ券」を自治体が物価高対策として住民に配布したり、全国農業協同組合連合会(JA全農)が発行する「おこめギフト券」を活用する例もあります。
東京都では、物価高の影響を受けやすい低所得世帯に対し、国産の米や野菜などの食品と引き換えることができる「東京おこめクーポン」の配布を行っています。対象世帯は、都内区市町村に住む住民税非課税相当となった世帯などです。
大阪府では、大学生等若者食費支援事業を実施し、物価高騰の影響が長期化する中、子育て世帯に準じて強く影響を受ける若者を支援するために、大学生年齢(19歳~22歳)の若者に、お米クーポンなどで米またはその他食料品を給付しています。
さらに各市町村でも、地元の店舗での購入に限定したり、直売所の米と引き換えたりして、家計支援にとどまらず、地元経済の活性化や生産者支援につなげる取り組みも生まれています。
25年度は約60の自治体が、政府の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を活用しています。同交付金は、自治体が自由に使い道を決められるのが特徴で、米の支援の他、給食費の上昇分の補てんや酒蔵への酒米購入支援、飼料・肥料価格補てんなどにも活用されています。
おこめ券やクーポンには「米の高止まりを助長する」などの批判の声もあり、問題はこれが一時しのぎの対策にすぎないことです。
アメリカではSNAPで支援
アメリカでは、2023年度の農業予算は約31兆円(2093億ドル)。そのうち7割(23兆円)が低所得者に対する食料購入支援(SNAP=栄養補助プログラム)などにあてられています。
その特徴は、(1)3億3千万人の人口の13%(8人に1人)がSNAPを受給しており、格段に幅広い層に食料が届けられている、(2)食料支援予算は米国人の家庭用食料購入額の12%に相当し、これは消費者の購買力を高めることによって農産物需要を拡大し、農家の販売価格も維持できる。食料支援は、消費者にとっても農家にとっても一挙両得--などの効果があります。
アメリカやフランスでは、フードバンクが集める食品のうち約3割が政府の提供によるものです。
アメリカやフランスと日本の決定的な違いは、公的支援の有無であり、公的支援をともなう恒久的な食料支援制度がないのは日本だけです。
いま求められているのは、一時的な対策だけでなく、低所得世帯や子育て世帯への国の食料支援制度です。米や牛乳・乳製品などを政府が買い上げて食料支援に回すことを強く要求します。
これは、国民の食への権利保障、生活困窮者支援、需要を増やして農業生産を拡大する、“一石三鳥”の効果があります。

