食料自給率向上、所得補償制度の確立求め国会でも地方でも(2025年12月08日 第1678号)
臨時国会で論戦スタート
野党がいっせいに導入迫る
開会中の臨時国会で、野党は食料自給率向上、所得補償(直接支払い)制度の確立を求めて論戦を展開中です。一方で、自治体でも自給率向上を求める意見書や請願、自治体宣言が広がるなど、地方からも運動が巻き起こっています。
価格保障は、農産物の価格(農家手取り価格)を生産コストにもとづく一定の水準に維持する施策です。販売量が増えるにつれて収入が増えるため、農家の意欲と誇りを高めることにつながり、農家経営の安定、生産の拡大に最も有効です。
所得補償(直接支払い)は、農産物の生産や販売量とかかわりなく、耕作面積や家畜単位など一定の基準で農家の所得を補償する仕組みです。
「令和の米騒動」を経て、積年の自民党農政の失敗が国民の前に露見するなか、参議院選挙で野党は共通して直接支払制度を公約しました。立憲民主党は「食農支払」、国民民主党は「食料安全保障基礎支払」を掲げ、共産党は価格保障・所得補償の実現を訴えました。れいわ新選組、社民党も農業予算の大幅増額と所得補償の確立を訴えました。
こうした公約は農民連が一貫して主張してきた「米の増産」、「食料自給率向上を農政の柱に」、「家族農業を支え、価格保障・所得補償を」の要求と多くの点で一致します。
自民少数の国会 絶好のチャンス
選挙後、国会内では、自民党が少数与党に転落し、自給率向上、所得補償確立を実現する絶好のチャンスです。10月21日に始まった臨時国会で、各野党はその導入を政府に迫っています。
11月6日の参議院本会議の代表質問で国民民主党の舟山康江議員は、EU(欧州連合)では、農業収入で経営が成り立つよう、農業収入の確保・支援策が実現されているとして新たな直接支払制度、「食料安全保障基礎支払い」の導入を求めました。
日本共産党の小池晃議員は、「農家が安心して米作りに取り組めるようにするためには所得補償と価格保障が不可欠」だと訴えました。
20日の参議院農水委員会で、立憲民主党の石垣のりこ議員は、「立憲民主党は、先を見通せる制度として、所得補償制度を導入し、食料確保と農地の維持支払い(食農支払い)を提言しています」と述べるとともに、市場任せの政府の米政策を批判しました。
25日の衆議院農水委員会で、れいわ新選組の八幡愛議員は、「米に関しての政策で、生産者への直接支払い、所得補償を行い、価格保障を実施」して、国民生活に寄り添った政策を求めました。
群馬 沼田市
食料自給率向上自治体宣言 採択
全会一致で可決 自治体から声を上げよう
群馬農民連会長 吉野 浩造
昨今の米騒動や不安定な国際情勢のなかで食料自給率向上に背を向ける政府・自民党の失政を踏まえ、群馬農民連では県下の全自治体から自給率向上の声をあげようと、各自治体に対し、自給率向上自治体宣言をしていただくよう、昨年の12月議会から要請をしています。
まだ一部の自治体は残っていますが、これまでの取り組みのなかで、意外と関心の高い自治体もあり、沼田市では、なんと全会一致で自治体宣言を可決するなど予想外の展開となりました。
議会のなかでは、「自治体が宣言を掲げることで、農家全体の意識が変わり、地域の農業振興や農業の担い手の増加、消費拡大の推進にもつながるものと考えられる」「食料の輸入依存度を減らし、食料自給率を向上させるために、状況に合った政策を実施していく必要があり、自治体が当該宣言を検討し、実践していくことが重要である」などの意見が出されました。
宣言の具体化を今後も粘り強く
さっそく私の地元でもある沼田市長に、可決した案件についてどのように考え、進めていくのかをうかがうつもりでいましたが、当の市長は、まさかの可決に戸惑いでもあったのか、「宣言については何も特別なことはない。従って会って話せることも何もない」という回答で、会うことはできませんでした。
しかし、議会決議は民意でもあり、議事録に残る以上は、市民としては何らかの態度表明を求めるものです。
今後、このことについて、市として別の形で政策に反映させる考えでもあるのかわかりませんが、農民連は、今後もタイミングをみて、必要性を訴えながら、宣言に基づいた政策が行われるよう粘り強く働きかけていきます。なお、残る自治体については、12月議会か年明けの3月議会に予定しています。
群馬 安中市
所得補償確立、自給率向上を求める意見書採択
群馬県内では、自給率向上、所得補償制度の確立を求める意見書や請願の採択がいくつかの自治体で生まれています。
安中市では6月議会で「農業者の立場に立った持続可能な農業政策の実現を求める意見書」が可決されました。
その内容は、(1)生産者の生業を支え、消費者にも恩恵をもたらす農家への「所得補償制度」を確立すること、政府が主食の米について、価格と需給に責任を持ち、現在も続いている事実上の減反政策を廃止し、増産に転じること、(2)農業関連施策の推進に当たっては、生産現場の意見を十分に踏まえ、食料自給率の向上や農業生産基盤の強化など食料の安定供給が図られ、将来にわたり多様な農業者が持続可能な農業を営めるよう、生産者に寄り添って行うことなどを国に求めています。
千葉県農民連
「所得補償」求めて県議会へ要請行動
共産党県議団に要請書を手渡す小倉副会長(右)と谷川事務局長(その左)
11月20日、千葉県農民連の小倉毅副会長と谷川聡子事務局長は、千葉県議会の各会派を回り、所得補償を国へ求める請願の協力を要請しました。
要請書は、「気候危機によってあらゆる耕畜種が打撃を受けているなか、国民に農産物を安定供給する土台作りが求められています。安心して生産に励めるよう、農家への所得補償制度が必要です」と述べています。
小倉さんは「食料と農業の未来に、生産者も消費者も不安を持っています。農家への所得補償を実現するために協力を」と呼びかけ、県議や事務局と次々と懇談しました。
埼玉 熊谷市
食料自給率向上を求める意見書採択
基本法改定で自給率軽視に危機感
埼玉農民連 森 恒男(熊谷市)
自給率向上を訴えて宣伝する埼玉食健連
=11月19日、浦和駅前
埼玉農民連では、県内各自治体に食料自給率向上を国に要請する請願を出す取り組みを行いました。私の住む熊谷市でも、昨年の12月定例議会に提出し、「食料自給率向上を求める意見書」が可決され、国に提出しました。
宣言は「命の源であり、緊急時に増産することが難しい食料・農産物の国内生産を拡大し、食料自給率を高める平素からの努力が不可欠である」とうたっています。
私が請願を出そうと思ったのは、主に2つの理由があります。1つは、米の価格が急騰し、連日テレビ、新聞等でスーパーでの5キロ入り白米が4000円~4300円と表示された状況が報道され、これに対して消費者は、高くて買えない、せめて3000円台にならないかという声がうずまく事態が起こったことです。
私のように、米作り農家からすると複雑な心境です。減反と低米価でさんざん苦しめられてきた者からすると、これくらいの値段は当然ではないか、今までが安すぎたのだ、今度の急騰は、米農家にとってはまさに「慶事」の言葉しかありません。
2つめの理由は、昨年、「食料・農業・農村基本法」が改定されたことです。これまでの同法では、曲がりなりにも食料自給率向上が旗印になっていました。しかし、今回はこれが後景に追いやられ、食料自給力向上に代わってしまいました。これは要するに輸入拡大にほかなりません。
昨年の暮れ、熊谷市の12月定例議会が開かれ、傍聴に出かけました。請願審議では、共産党議員の趣旨説明から始まり、これに対して、賛成・反対の討論が行われました。
賛成討論にたった共産党の議員は、基幹的農業従事者が10年で3割も減少し、農地も同様の状態になっている、自給率向上のため、農業予算を抜本的に増やすべきだと、私たち農家が思うところをずばり指摘してくれました。
最後に採決の結果、20対9の賛成多数で請願が採択されました。
福島 安達地方農民連 再生産可能な米価を
軽トラ連ねパレード
軽トラなど10数台で各市町村を
パレードしました
福島県の安達地方農民連は10月29日、第14回軽トラ・トラクターパレードを開催し、21人が参加しました。
出発式では応援にかけつけた日本共産党の岩渕友参院議員が「高市政権で大臣が変わった途端、米は増産方針から減産となった。すべての責任を押し付けている。農家のみなさんが安心して作れるようにして、消費者も手ごろな価格で手に取れるようにすることが政治の責任。皆さんの声をしっかり届けて一緒に力を合わせ、そういう農政に切り替えていきたい」とあいさつしました。
のぼり旗やプラカードを掲げて
のぼり旗やプラカードで「食料自給率向上を政府の法的義務に」「インボイス制度廃止・消費税は5%に減税」「ALPS処理水海洋放出反対」などのスローガンを掲げ、軽トラや宣伝カーなど10数台が本宮市、大玉村、二本松市をパレードしました。
菊地好幸会長は「私たち農家も決して米の値段が高ければ高いほどいいとは思っていません。再生産可能で持続可能な値段を求めています。政府が主食を市場任せにせず、価格保障と所得補償で保護する、それがあたりまえの政治ではないでしょうか」と訴えました。
(福島・あだち地方農民連ニュースから)
神奈川 座間市
農政の抜本的転換を求める意見書 全会一致で
米不足の現状示して所得補償の必要性訴え
座間市議会議員 守谷 浩一(日本共産党)
神奈川県座間市議会では、「食料自給率向上に向けた農政の抜本的転換を求める意見書」が6月26日に採択されました。
次のような内容です。
(1)国内食料を増産し、食料自給率の目標値と目標達成に向けた計画を明らかにすること。
(2)安定的な農業経営を確保するために、所得補償制度を確立すること。また、主食の米については、政府が価格と需給に責任を持ち、増産に転じること。
(3)我が国の農業と農地を守るためには、多様な農業経営体が必要であり、規模拡大や効率化を対象とした補助要件に加え、家族経営が主体の農業者も持続的な農業経営が可能となる仕組みづくりを進めること。
他自治体の意見書に加筆修正し
昨年から続く米の価格高騰を何とかしたいと思い、減反見直しや農家への支援に関する内容の意見書を提案したいと考えました。その際、少し内容を削ってでも採択されるようなものにしようと、他自治体で採択された意見書を加筆修正することにしました。
まず書き出しは、「昨今、米の不足及び価格高騰により、国民の家計を大きく圧迫している状況です」として、米不足という現状を示しました。
次に、「2018年には国による直接的な生産数量目標の配分(いわゆる減反)は廃止されたものの、転作農家への補助制度拡充や、農林水産省が毎年決定する適正生産量に基づく実質的な生産調整は今もなお続いているのが実状です」と実態を記しました。
そして、国へ求める内容として「自主減反につながる制度全体の実態の再検証、国内における価格の安定を図ること、生産者に対する負担軽減策」について箇条書きにして仕上げました。
座間市議会では意見書案は、採決を行う数日前の議会運営委員会で事前配布されます。休憩をとり、30分から長い場合は1時間以上をかけて、複数の意見書案について協議、賛同または保留として態度を表明します。
本会議当日はすぐに採決となります。結果として全会一致で採択され本当に良かったです。今後も自民党農政の改善を求めていきます。

