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「米騒動」から教訓引き出し農業の未来を変えていこう(2025年12月08日 第1678号)

FFPJが「令和の米騒動」シンポ
「米価高騰は生産量不足により起きた」
遅きに失した無責任体制の転換を
腰を据えた農政で安定供給の道を!

 国内の家族農林漁業の発展をめざす「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)は11月14日、『「令和の米騒動」を問う―日本のコメを次世代につなぐ―』をテーマに都内の国会議員会館内でシンポジウムを開催しました(オンライン併用)。「令和の米騒動」からどのような教訓を引き出し、日本の農業の未来をどうつくり直していくべきか。生産者、流通業者、消費者、研究者がそれぞれの立場から討論しました。

需要に応じた生産という失策

(右から)パネリストの山根さん、相川さん、天明さんと池上さん

 討論に先立ち、FFPJ常務理事の池上甲一さん(近畿大学名誉教授)が基調講演を行い、「令和の米騒動」の概要を解説。2024年2月の時点で「米需給見通し指数」が72になったこと(主食用米の価格に関する見通しで、100に近づくほど需給「ひっ迫」を意味する。25年10月時点で同指数は39)、24年4月にはスポット取引価格(卸売業者の間での取引価格)が60キログラム当たりで4万7000円を超え急騰したことなどを紹介。この時点で、後に「米がない」と全国各地でパニックになっていく前兆となる動きがあったことを指摘しました。
 政府は今年8月5日、「米の安定供給等実現関係閣僚会議」で「今般の米の価格高騰の要因や対応の検証」の結果を発表。その基本的な原因を「需要見通しの過小評価と生産量の過大評価」にあったと報告し、「米価高騰は生産量不足によるもの」という結論を出しました。これについて池上さんは、「需要と供給のバランスを取るとして続けてきた政策の失敗であり、天候や自然などの要因が大きく関わる中で、そもそも需給を均衡させるのは不可能」と指摘し、政府の「放置・硬直性・初動の遅さ・無責任体制」を批判。その上で「米の安定的生産」には、(1)国の公的関与、(2)農家と食べ手の連携強化、(3)自ら「作る人」になることを実現していかないといけない、と提起しました。

農家の犠牲で成り立つ米価

 また、これまでは生産者米価が安すぎて、農家の犠牲によって“買える消費者米価”が続いてきたことを池上さんは重大視。「今の米の消費者価格が高い、と感じるのは国民の実質賃金が安すぎるからであり、『賃金を上げろ!』という声も同時に主張することが重要」と述べました。
 シンポジウムの後半ではパネリストによる討論を実施。新潟県上越市で米などをつくる天明伸浩さんが生産者として、日本米穀商連合会専務理事の相川英一さんが流通業者として、主婦連合会常任幹事の山根香織さんが消費者の立場で登壇し、池上さんを含めた4人で活発な議論を重ねました。

「もっと早く対策打てれば」

 日米連の相川さんは、「私たちのところでも、24年2月から『米がない』というお米屋さんからの情報が入ってきていた。『これは大変なことになる』と4月に農水省に行くと、『量販店には十分ある』『23年産は作況指数101だから大丈夫』などと言って取り合わなかった。その後パニックに陥ったとき農水省は『南海トラフ地震情報のせい』『転売ヤーのせい』などと言った。4月の時点で対策を打てば、ここまでの騒動にはならなかったのではないかという忸怩(じくじ)たる思いがある」と振り返りました。
 主婦連の山根さんは、「私たち主婦連は“暮らしの悪さは政治の悪さ”と問題提起を行ってきたが、『令和の米騒動』は本当に暮らしに直結する大きな問題として今も続いている」と表明。今年3月と11月に「農家への所得補償を実現して安定供給を求める」などの要望書を国に提出したことを紹介しました。

与野党の議論と自治体への要請

 農家の天明さんは「デジタル技術を農業に応用・活用することで農家や農村が主体性を失っていくとすればそれは良くない。米騒動の最中で惨事に便乗するように『節水型乾田直播(は)』が大々的に扱われていることも懸念している」と発言。農家の手取りを減らすことなく、安定した米価でこの先の経営計画が立てられる農業政策を「与野党が一緒になって議論するとき」と指摘しました。
 池上さんも「腰を据えた農業政策が最も重要」として、「生産費と生産者米価の差額」を価格補てんや不足払い、所得補償などの形で実現させる必要性を強調。「そこに向けて重要なことは自分たちの住む地方自治体に働きかけること」だと強調しました。

騒動に負けない関係の構築重要

 今後の展望についても語られました。山根さんは「今の米の値段は高いと言うが、それでも菓子パンやパスタなどの一食分よりも安い、ということを消費者として広げたい。その上で適正価格の議論を活発にしていくべきだ」と述べました。
 相川さんは「私たちは、生産者さんには『この先の10年20年を見据えて、一緒にやっていける小売業者と付き合ってほしい』と伝えている。消費者の皆さんには『日頃から米屋さんとの関係を築いていってほしい』と伝えている」と発言し、今回のようなパニックが起きても動じない生産と消費の関係性の構築を呼びかけました。
 天明さんは「地域の疲弊は本当に深刻。多くの農業では外国の人たちに頼らないといけない状況だ」としつつも、「日本の気候や風土が良い、と定住を希望する人も多い。これからはそういう人たちと一緒に地域をつくっていく。排斥ではなく、思いの共有が大切」だと語りました。

 シンポジウムの概要や動画はFFPJホームページで見ることができます。