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日本農業の現実を正確に知りたい 韓国の農民が新潟を訪問(2026年01月12日 第1682号)

平場や中山間の米農家と交流

 韓国の農民団体が2025年12月9、10日に新潟を訪問・視察し、新潟県農民連が歓迎しました。韓国と日本の農民の交流を紹介します。

 今回日本を訪れたのは「全羅北道(ぜんらほくどう)」という地域の「社団法人全北農業人団体連合会(全北道連盟)」の農家と事務局22人と通訳兼添乗員2人の合計24人。母体団体は、国際農民組織「ビア・カンペシーナ」に加盟している韓国「全国農民会総連盟」です。
 成田空港から大型バスをチャーターし、3日間で現地をまわるという力の入った行程で、新潟県農民連の鶴巻純一会長、佐藤恒夫副会長、鈴木亮事務局長らが農家やJAの直売所訪問などを組み、時折雪もちらつく現地を案内しました。全羅北道は韓国有数の米どころで、今回来日した農家も多くが米農家です。韓国の皆さんは3軒の農家を訪問・視察しました。

米価の高騰でどんな影響が…

久保農園での記念撮影。前列右から3人目が鶴巻県連会長、その左隣がファン会長、左へ1人おいて久保さん

十日町市松之山での交流。立って話すのが相澤さん

長谷川農場での視察・交流。一番左が長谷川篤さん、その横が政美さん

 長岡市内の平場で米20ヘクタール、野菜10ヘクタール(枝豆を中心に長ネギやキャベツ)を栽培・販売する久保農園(脇川新伝町)の久保和喜さん(39)は、「農協の部会に所属しているが、8割ほどは個人として販売している。経営は家族と従業員2人にパート7人」など自身の農業経営を紹介。韓国の皆さんは「農協出荷より価格差を付けられるから個人で販売している?」、「米価の高騰でどんな影響が出ている?」、「人件費はどのくらい?」など熱心に問いかけました。久保さんは、「価格差を付けるというより信頼関係を築いてブランド化を確立したいと思って販売している。米価も採算が合う値段で売り続けている。人件費は全体の支出の30%ほど」と丁寧に回答。「韓国も人件費は同じくらい」、「農家の平均所得は約500万円。農業所得は100万円未満が多い」、「韓国は農業所得は非課税」など活発なやり取りを交わしました。
 2軒目は親子で40ヘクタールの田んぼを長岡市内で耕す長谷川農場(雁島町)へ。父親の政美さん(68)と息子の篤さん(34)は、家族経営でこの面積を管理するためとして、「8品種の米をつくり、1品種の収穫に1週間ほどかけて、2カ月間稲刈りを続けることで、少人数でも一番いい時に収穫できるようにしている。生産に徹し、販売は業者に任せている」と経営の工夫を伝えました。「なぜ米の値段は上がったと考えている?政府の政策に望むことは?」との質問に長谷川さん親子は、「農水省は一昨年、昨年の米の収量見通しが甘かった。農協は米が集まらないから集荷単価を上げたことで今年は特に高い値段になった」、「生産者と消費者の双方がやっていける価格を実現するために国は所得補償や価格保障を行ってほしい」と答えました。

中山間地農業にも関心高く

 最終日は雪に覆われた十日町市松之山集落を訪問し、中山間地で米を作る農家と交流。「世界有数の豪雪地域にようこそ」と出迎えた地元の米農家の相澤堅さん(44)は、家族で田んぼ7ヘクタールを耕しています。相澤さんは「この地域で専業農家として続けていくために私たちは、作った米のほとんどを直接販売することで所得を確保している。発送作業などは大変だが、おいしい米を顔が見える関係の中で販売し、安定した経営の維持に努めている」と説明。「一番大変な作業は何ですか?」、「一昨年の『農業基本法』改定では皆さんと一致する政策はありましたか?」との質問に「日本の農政は山間地に関する政策がほとんどない。大変な作業は草刈りと水の管理」と相澤さんが答えると韓国の皆さんも「うんうん」とうなずきました。

韓国農業の未来は日本の農業

 今回の視察に先立ち、韓国側から「MA(ミニマム・アクセス)米について」(注・韓国も日本と同様に95年からMA米を受け入れている)、「令和の米騒動について」など10項目の事前質問が届いていました。
 鶴巻県連会長は、「農林業センサス2025では新潟県内の農業経営体数は5年前より約9800減って3万3702になっている。平均年齢は69歳。私たち農民連は農家数の減少を防ぎ、地域の農業を守るための農業政策を要求している。今後も力を合わせていきましょう」とエールを送りました。
 「全北道連盟」のファン・ヤンテク会長は、「韓国政府は日本の農業をモデルにして自国で展開しようとしている。だから日本の農業が希望あるものにならなければ、韓国の農業の未来も明るくならない。今後も交流を活発に行いたい。次は農民連の皆さんが全羅北道にぜひ来てください」と返し、両会長は固い握手を交わし視察を終えました。