さいたま市食肉中央卸売市場 廃止方針は撤回を!(2026年01月26日 第1684号)
食肉処理施設の老朽化は深刻 全国に波及の恐れ
「卸売市場法」改悪が引き金に
埼玉県にある食肉中央卸売市場・と畜場について、設置者のさいたま市が「廃止の方向性を決定」し、畜産関係者らに激震が走っています。
同市場は、施設の老朽化や食肉処理施設の近代化のために移転する計画でしたが、さいたま市は、建設費の高騰や国庫補助金が少ないこと、卸売市場法の改正などを理由に、突然「移転を中止し、事業も廃止」することを発表しました。国や県にも事前に相談しないままの決定でした。
廃止によって、約80人の市場従事者が失業の懸念がある他、精肉やモツなどを扱う小売りや飲食業、革を扱う業者、農家から家畜を運搬する家畜商など、関連企業は70社にも及ぶと言われており、地域経済への深刻な影響が懸念されます。
公設公営だからこそ、安心して出荷できる
同施設は、年間約6万5千頭の牛・豚をと畜(2024年度実績)。首都圏へのアクセスや、東北道沿線の立地から、北関東や東北、北海道からも出荷されています。とりわけ、民間の食肉処理施設には敬遠されやすい乳用牛を受け入れる施設として、酪農関係者から頼りにされています。
同市場の関係者は、「数年前に栃木県内の食肉処理施設が統廃合され、栃木県内からの乳用牛が増えた。酪農への影響が心配だ」と指摘します。
乳用牛の処理は、乳汁が多く発生し、手間がかかります。さらにEUなどは食肉と乳汁の接触を厳しく規制しており、海外輸出を重視する民間の食肉処理施設では、乳用牛は敬遠されがちです。「だからこそ、この公設市場が存続し、機能強化することが必要」と市場関係者は強調します。
埼玉県内の酪農家は、「廃用になる乳牛の出荷が停滞すればエサ代などの経費も余計にかかる。病気で治療すると食肉にできない場合もあり、収入が減ってしまう場合も。なくなっては困る施設です」と語っています。
「建値市場」がなくなれば業界全体に影響
同施設は、食肉価格の安定にも寄与しています。食肉の中央卸売市場は全国に10カ所あり、なかでも首都圏の東京(芝浦)、神奈川、さいたま市の3場は「建値(たてね)市場」とされ、JAや民間取引の相場の目安になっています。
埼玉県内の家畜商は、「首都圏の価格の乱高下を防ぎ、食肉流通の安定のために欠かせない役割を果たしている。民間市場に出す農家も、民間施設で相対取引している業者も、同市場がなくれば必ず影響が出る」と危惧しています。
市は、「他の食肉処理施設などで対応してほしい」と開き直っていますが、県内にある6つの食肉処理施設をはじめ全国的に老朽化しており、6万頭以上も受け入れる余力はないのが実情です。また、同市場は、大学や国の研究機関へ冷蔵で子宮や卵巣などを提供し、獣医学、家畜繁殖技術確立へも寄与してきました。
鈴木農水大臣も卸売市場の重要性を国会で答弁
市は、「卸売市場法の改正により、公での関与の必要性が減退している」と説明していることから、昨年12月の参議院農林水産委員会でも議論されました。
日本共産党の岩渕友参院議員は、「広域的重要性を鑑みれば、廃止はできない。市場法改定の時にも、公的関与の後退から廃止が起こるのではないかと懸念されていたが、その通りの事態になっている。法改定した農水省にも責任があるのではないか」とただしました。
鈴木憲和農水相も、「廃止ありきではなく、卸売市場の役割を踏まえ、現場に寄り添った指導をする」と答弁し、重要性を認めています。
いま、全国の食肉処理施設や地方卸売市場は、老朽化や赤字を抱えて統廃合や廃止が続いています。
さいたま市のように、代替え施設も提示せず、一方的な廃止を許せば、今後全国に波及する懸念があります。
畜産業と食肉の安定供給を守っていくためにも、公設公営の卸売市場・食肉処理施設の廃止撤回を求める運動が求められています。また、当事者である市はもちろん、国や県も責任を果たして存続させていく必要があります。
埼玉のブランド豚も消滅の危機
(有)松村牧場(加須市) 松村淳さん

年間約8000頭の豚の全量をさいたま市場に出荷しています。市の発表直後から廃止に反対してきました。
松村牧場が生産するブランドの「香り豚」は、埼玉を中心にとても人気ですが、廃止されると、出荷先が全くなくなり、ブランドが消失しかねません。突然廃止を決定し、廃止後の出荷先などにも関与しないと説明する市の対応は許せません。
私がさいたま市場に全量を出荷する理由は、公設公営で安心できるからです。個体別の重量が正確に計測され、枝肉も公正なセリで取引されることから、民間にはない安心感もありますし、結果的に経営安定にもつながっていると思います。
県の畜産振興のためにも、廃止は絶対に止めてほしいです。

