アイコン 新聞「農民」

旬の味(2026年03月09日 第1690号)

 最近、近所の畑で新規就農の若者と知り合った。私は夫と2人で農業を営んでいるが、地元で長く続いてきた義父母が作ってくれた基盤の上に立っている。いわば“シード権”を持っての出場である▼一方、彼はゼロからトーナメントに挑もうとしている。農地を探し、資金を工面し、技術を学び、地域に溶け込まなければならない。その一つ一つがとてつもなく手ごわい▼情熱も夢もある。だが情熱だけではスプレイヤーは買えない。夢を語れば、不安を指摘され、覚悟を問われるような空気もどこかに残っているような気がする▼農業は挑戦を歓迎する産業であるべきだ。人の根幹を支える仕事なのだから。支える仕組みは十分だろうか。私たちは支える側の人財になることができているだろうか▼種をまく前に土を耕し、芽が出れば草を取り、土を寄せる。その手間を惜しまないことこそ、農に携わる私たちだからこそできる若手育成ではないか。私は、いつでも寄り添い、そっと手を差し伸べられる人でありたい。(紫)