土に根を下ろし、地域のつながりを生かす農業を目指して(2026年03月23日 第1692号)
隣の畑の青年を仲間に迎える
福島県伊達市・佐藤巴胤さん、紫苑さん夫妻
紫苑さん(左)と巴胤さん
農業の新しい未来を、土に根を下ろしてつくろうと模索する福島の農家たちを紹介します。福島県伊達市で、いちごときゅうりをメインに、季節の野菜も栽培する佐藤巴胤さん(42)、紫苑さん(40)は、地域のつながりを大切に農業をがんばっています。今年2月、隣の畑で出会った30代の青年を農民連に迎えました。
畑に好青年がいた!「友達になろう」と声をかけて
佐藤さんの隣の畑で作業していたMさん(30代)は、今年から新規就農し、桃ときゅうりなどを栽培しています。数年間、農業法人で働いたのちに、桃農家としての独立を目指し、会社員をしながら兼業農家としてきゅうり栽培を始めました。今年から、専業農家として大好きな桃に挑戦しています。
Mさんが借りた畑が、たまたま佐藤さんの隣の畑だったことから、交流が始まりました。巴胤さんは、「最近、隣の畑に朝から暗い時間までせん定をがんばっている若者がいるなぁ、友達になりたいな、と気にしていたんです。声をかけて出会えてよかった!」と振り返ります。
農民の苦難あるところに、農民連あり!
Mさんは、新規就農の直後、急きょ、桃畑が借りられることになりましたが、確定申告の時期で、新規就農の書類作成も重なってしまいました。さらに、農作業では桃のせん定も始まる時期で、枝の処理や、機械の手配など、作業が多発しとても困っていました。
その話を聞いた佐藤夫妻は、福島県北農民連の服部崇事務局長も交えて、自宅で相談会を開きました。
服部事務局長が新規就農の参考資料を集め、佐藤夫妻が献身的に相談に乗る中で、Mさんは「目の前の課題を解決してくれた。今後も自分だけでは農業はできないから農民連の力も借りよう」と入会を決意しました。
さっそく、3月の県青年部総会・合宿に参加し、県内の農家と交流を深めました。
優しく、心の広い農家になりたい
果樹農家としてスタートを切ったMさんは「優しい農家になり、自分の挑戦に背中を押してくれた人を笑顔にしたい」と将来の抱負を語ります。
以前の会社では、強い経営を学び、辛さも経験しました。「だからこそ、優しい人でありたい。自分が助けてもらったように、困っている人には手を差し出してあげられる人間になりたい」と語ります。
果樹栽培は一人作業では限界があるため将来は従業員も雇用していく計画です。「多品目栽培で、1年を通して仕事ができる環境を整えて、一緒に働く人を大切にしたい。今は、経営を安定させることが一番ですが、将来は一緒に働く人、地域の農家、関わるすべての人に感謝の心で、甘えずに、優しい経営者に成長したい」と真っ直ぐ前を見つめています。
学び・支え・尊重する農家になりたい
果樹中心のMさんと、野菜を中心の佐藤夫妻は、違う作物同士だからこそ、情報交換も盛り上がります。
紫苑さんは、「農業のやり方に正解はないし、経験値があっても、逆に教えてもらうこともたくさんあります。慣行栽培にも有機にも、いいところや大変なことがあります。答えがないからこそ、農業はおもしろいのです。どちらかを押し付けることなく全ての農家・農法を尊重し、学ぶ姿勢を大事にしたい」と話します。
さらに「農民連は、『農家の生活改善と地域農業の発展、生産者と消費者をつなぎ、安心で安全な食のために運動や研究開発など、日本の農業の現状と未来について真正面から取り組み、改善の道を探りながら歩んでいる団体』という紹介文を読みました。この理念が本当に大事だと思います。ここには、農法や思想を否定していない。農業者であれば、みんなを受け入れるのが、農民連です。この考え方がとっても大事だと思います」と農民連の役割を強調します。
紫苑さんは、新規就農者や移住者に、超人的能力を求める風潮を危惧しています。
「農業は陸上競技場のようなもの。同じ農業というフィールドに立っていても、作物によってやっている競技は全く別物。農業は地域で支え合い、学び合い、お互いを尊重して対等な立場でいてこそ成り立つと思っています。そして、人は土から離れては生きられません。武器をつくり、強い力を持っても、結局は土から離れられません。人間の根幹を支える産業が農業です。だからこそ、新規就農者や移住者が超人的コミュニケーション能力がないと続けられないような空気では、農業は維持できません。時代にあった地域のコミュニティーを作りたい」と語ります。

