アイコン 新聞「農民」

旬の味(2026年05月25日 第1700号)

 農家の倉庫はなぜあんなにも片付かないのだろう。嫁いだ私にとっては不思議で仕方がなかった。半端なマルチ、転がるエルボー、ちょっと錆(さ)びているハウス金具等々、外から見ればガラクタだが、父に言わせれば全部使うらしい▼何度も何度も片付けを試みたが、いつのまにかまた増えていく細々としたモノたち。「もらってきたんだ」と、ニコニコの父。「何に使うの?」と苦笑する息子。こっそり捨ててしまおうかと思う私▼しかし、最近わかってきた。これは記憶であり歴史だ。工夫して幾度の危機を乗り越えてきた経験なのだ。私たちが必要とするものは「4番に入っている」という父の言葉でほとんど解決される。最近の資材高騰も「4番にあったべ」という言葉で何度も救われた▼倉庫に積まれているのはただのモノではなく、なんとかしてきた父の歴史なのだ。壊れるまで使うのではなく、壊れてから工夫するのだ。一本の針金も、80歳に近い父も、まだまだ現役でいてもらわなければ私たちは困る。(紫)