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飼料・資材高騰 畜産経営を直撃(2026年06月01日 第1701号)

「令和の畜産危機」の再来が現実のものに

下仁田ミート(株)名誉会長
上原 正(群馬農民連副会長)

 アメリカとイスラエルが国連憲章と国際法を踏みにじり、イランへの武力攻撃を開始したことで、イランは対抗措置としてホルムズ海峡を事実上封鎖しました。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の大動脈であり、この封鎖により原油価格が急上昇しています。原油が高くなると、肥料・ビニール資材・農業用プラスチックなど原油を原料とする多くの生産資材が値上がりします。
 家畜に与える飼料そのものは中東諸国から輸入はしていませんが、原油高による海上輸送費の上昇や生産コストの上昇が飼料価格に影響を与えています。

配合飼料価格は「高止まり」から再び「高騰」へ

 全農は4月から全畜種平均で1トン当たりの配合飼料価格を1250円値上げしました。今年1月にも4200円値上げしており、合計で5450円のコスト増です。
 ある飼料メーカーによると、7月に港湾に到着する輸入とうもろこしの価格が約4000円値上がりしており、さらに約5000円も上がると見込まれています。
 豚は出荷されるまでに約300キログラムの飼料を食べます。飼料が1トン当たり1万円値上りすると、1頭当たりで3000円、豚1頭は枝肉に換算すると約75キログラムですので、豚肉1キログラム当たり約40円ものコスト増となります。

更なる高騰で廃業続出の危機

 配合飼料価格は2020年10月から上がり始め、22年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、同年7月には1トン当たり1万1400円も値上がりし、2年間累計で3万2850円の値上げとなりました。これにより1頭あたり約1万円、枝肉1キログラム当たり130円もの負担増となりました。
 この時期は、「令和の畜産危機」とよばれ、多くの農家が経営難で廃業しました。配合飼料価格安定基金や、国の緊急対策事業で一部は補てんされましたが、飼料価格はその後も高止まりが続いたため、24年以降は基金の発動がなくなりました。
 現在も1トン当たり2万円以上もの高い水準が続いており、26年からさらなる値上げが始まるとなれば、再び「令和の畜産危機」が起こる可能性があります。

飼料高騰で補てん基金が枯渇農家の負担増加

 飼料価格が高騰すると、生産者と飼料メーカーで積み立てた配合飼料安定基金から補てん金が出ます。ところが21年から23年までの3年間、連続して補てんが続いた結果、基金の財源が枯渇してしまい、飼料メーカーは借金をして農家に支払う事態となりました。
 飼料メーカーの借金は、最終的には飼料代金に上乗せされ、畜産農家の負担となり、望ましくありません。現在は廃業した農家の分まで残った畜産農家の負担で借金を返済している状況です。
 さらに今年1~3月の飼料購入分(契約数量が限度)に対しても、配合飼料安定基金から1トン当たり1750円の補てんが決まりました。4~6月期も発動が予定されています。
 本来ならば、畜産農家にとっては高騰分が補てんされるのは助かるはずです。しかし現在の生産者と飼料メーカーが積み立てる基金制度では、補てんされても最終的には畜産農家が負担する「将来の返済金」がふくれ上がるだけです。現在の基金制度の行き詰まりを解決していくには、国も補てん制度への拠出金を増額していくことが求められています。

養豚農家助ける実効性ある「豚マルキン」の発動を

 肉牛や肉豚には、肉の価格が下がって赤字になったときに補てんを受けられる「経営安定交付金制度」(マルキン)があります。この制度は標準的販売価格が標準的生産費を下回った場合、その差額の9割を補てんする制度です。これは農作物の収入保険制度よりも有利となっています。
 しかしながら、新制度になってから7年間、一度も発動はありませんでした。その理由は、2022年の飼料高騰時に配合飼料安定基金から補てん金が出て生産費が下がったたように見えたためです。しかし先述のとおり、この補てん金は飼料メーカーが借金をして農家に支払った「一時しのぎ」の補てんであり、長期的に農家にとって良いとは言えません。むしろ補てんを止めて赤字(=コスト増)を明確にし、「豚マルキン」を発動させた方が農家の経営は安定した可能性があります。

ナフサ不足で包装資材値上げ・出荷制限

 原油価格の高騰やナフサ(プラスチックの原料)の不足により、包装資材の値上げや出荷調整が始まっています。
 農場や店舗・工場で使用するニトリル手袋は医療用が優先され、数量が制限され、価格が上昇。ダンボールも物流コストの上昇で値上げ・出荷制限となりました。品目によって値上げ幅は異なりますが、5~30%以上となっています。
 物価高騰により生産者だけでなく、消費者の生活にも影響が出ています。物価高騰の背景には、国際情勢の不安定さや物流の混乱があります。一刻も早く紛争が収まり、ホルムズ海峡が安定して開かれ、物流が正常化することが望まれます。