税と社会保障を考える③ 給付付き税額控除って、どんな制度?(2026年06月08日 第1702号)
海外では導入と同時に給付水準を切り下げ
デジタル対応の押し付けにもつながる
国民会議より国会で議論を

政府の社会保障国民会議(国民会議)で盛んに議論されているのが「給付付き税額控除」です。所得税を税額控除で定額減税し、所得税額が少なく減税しきれない場合はその残りを給付するという制度です(図)。考え方は24年に岸田政権によって行われた定額減税と近いものです。
一見すると低所得の人にも給付がされることから、所得税の税率引き下げなどと比べ、所得再分配の強化につながるように見えます。
しかし実際に導入した諸国の実態からは、問題点が浮かび上がってきています。
1.制度が複雑になり、ミスや未申請が多発
立命館大学法学部の望月爾(ちか)教授は「アメリカでは制度が複雑で納税者が判断できず、申請していない対象者が20%いるといわれている。また制度の複雑さが原因で、支給額の30%近くが誤支給または過大支給と言われている。そのため低所得層が税務調査のターゲットにされやすい」と指摘しています。
また日本が参考にしているといわれるイギリスのユニバーサル・クレジット制度では「オンライン申請・管理が義務付けられ、高齢者やネット環境のない低所得層が取り残されている。制度の複雑さで申請ミスによる却下や、途中であきらめるケースも後を絶たない。給与に連動するため給与の変動により、給付が安定せず生活の安定を保ちにくい」と指摘。
下関市立大学の関野秀明教授も「日本で導入されれば、マイナンバーひも付けの導入強制につながりかねない」と警告しています。
2.制度統合で給付削減の口実に
イギリスではユニバーサル・クレジット制度導入とあわせ、社会保障制度の統合が行われました。その結果として、数百万世帯に給付額の切り捨てが起こっていると望月教授は指摘します。
関野教授も「低所得者層にやさしいように見えるが、重複する社会保障の削減が行われかねない。給付付き税額控除を口実に、生活保護の削減などが起こりえる」と警鐘を鳴らします。
望月教授は「拙速な導入は税制や社会保障制度の破壊や混乱につながる恐れがある。特に現状の社会保障の切り捨てにつながらないよう、国民全体に向けた慎重な議論が必要だ」とも指摘しています。
「国民会議」ではなく国会で、国民に見える形で議論させることが必要です。

