アイコン 新聞「農民」

地球へのリスペクトを心掛けて 有機栽培でがんばる青年(2026年07月06日 第1706号)

子どもたちに胸を張れる食べ物作りたい
長野県佐久・小海町
的埜 渓さん(30)

家族らと一緒の的埜渓さん(左前)

フードトラックで手料理を振る舞います

 長野県の東部、八ヶ岳と千曲川に抱かれた南佐久郡小海町で有機栽培をがんばる青年がいます。

こだわりの野菜100種類育てシェフも信頼

 あとくら農園の的埜渓さん(長野・佐久農民組合会員)は、実家の農業を継いで9年目です。
 信州特産のわさび菜をはじめ、約100種類の野菜を弟と母親、高校の同級生、パート従業員の5人で育てています。
 玉ねぎは、秋に苗を植え、畑で越冬させて、初夏に収穫します。「畑で時間をかけて、丁寧に育てることで、味の濃さも、日持ちもよくなります」と渓さん。こだわり野菜は、レストランからも人気で、栽培する種類もニーズに合わせることもあります。シェフが畑に訪れて、その場で試食するときは、「楽しみでもあり、ドキドキです」。
 販路は、飲食店のほかに、地元のスーパーや、個人宅配もしています。

「農家なんか」から一念発起

 渓さんは、「農家なんかやるもんか」と家を出て、料理家を志して、専門学校に通いました。卒業後は、都内のレストランで料理人としてのキャリアを積んでいました。
 勤務先のレストランに自家農園があり、幼少期以来の畑作業をする中で、「これやりたい!」と一念発起して、実家にUターンしました。
 帰郷して、農業をはじめると、「農業は楽しい!」と、やりがいも芽生えました。
 しかし、就農直後は、苦労も経験しました。収入が気がかりで、焦りで、「しんどい」と思うこともありましたが、「お客さんの『おいしい』の声を大事にして、野菜作りの本質にこだわろう」と、気持ちを切り替えて、野菜作りに打ち込みました。すると、視野も広がり、お客さんも増えて、従業員も迎え、好循環できるようになりました。

地域、地球とのつながり大切に

 あとくら農園では、「子どもに胸を張って食べてもらえるものを作りたい」という強い思いから、無農薬・無化学肥料で有機栽培しています。
 「農業は、地球の恩恵を受けて成り立つ仕事なので、常に地球へのリスペクトを心掛けています。たとえば、虫対策は、育成初期にネットをかけるなど物理的対応に加え、葉物野菜は春と秋、夏は夏野菜など、適期に旬のものを作ることもポイントです」と話し、自然と常に向き合っています。
 近年では、有機農業への注目の高まりから、有機農業を学びにくる人も増えています。

農業の未来へアクションする

 就農9年目の渓さんは、農業の魅力を発信したり、新しい人を支える側としてもアクションを始めています。
 いま、取り組んでいることは、料理人としての経験を生かしたイベント出店です。フードトラックで自慢の野菜を使った手料理を提供しています。
 出荷できない野菜も有効利用して、パスタや、サンドイッチなど旬の食材を生かした料理を提供します。出会った人に農業現場のことも伝えています。その後、農業体験に参加する人も生まれています。

収穫体験ツアーなど農業体験を

 収穫体験ツアーでは、農作業を体験し、畑でランチを食べてもらい、農業への関心を高める取り組みもしています。
 「たくさんの人に畑に直接触れてもらうことで、農業に興味を持ってもらうきっかけを作りたい」と話しています。