旬の味(2026年07月13日 第1707号)
私の住む地域に久米官衙遺跡群という廃寺跡がある。そこにはたくさんの曼珠沙華(まんじゅしゃげ)が咲き、秋を彩っている。花名は古代インドのサンスクリット語で「天界に咲く花」を意味し、仏教の経典では吉祥の花とされている。日本では「彼岸花」とも呼ばれ、稲作とともに伝わったといわれている▼球根には毒性があるため、田畑の畔に植えられ、害獣から作物を守る役割を果たしてきた。また、球根から取れるデンプンは糊(のり)として利用され、和紙や布の仕上げに使用したり、繊維を取り出し織物の材料にしたりした地域もある▼毒と薬の2つの顔を持ち合わせる球根には薬用成分を含み、現代では認知症治療薬にも活用されている。飢餓の際には毒を抜いて非常食にもなった▼9月に廃寺跡で開催される祭り「曼珠灯会」で灯される赤い明かりは、古代から続く命と歴史を照らす明かりでもあり、曼珠沙華が咲くこの地で、先人から受け継いだ自然と歴史の価値を大切に守り、未来へ手渡していきたい。(寛)

