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クラウドファンディングで新たな挑戦(2026年08月10日 第1711号)

ボランティアや農業体験受け入れでファン増やし
環境再生型農業を広げ、農業の大切さ発信したい

 「キジが巣を作っていたんですよ」そう笑顔で話すのは、千葉県山武市で、夫婦で新規就農して7年目の川並正樹さん(49)です。現在は約2・5ヘクタールの畑で無農薬栽培に取り組んでいます。目指しているのは、野菜を育てるだけではありません。土を育て、生きものを育み、人と人をつなぐ「環境再生型農業」です。

 

千葉県山武市 おひさま農園
川並 正樹さん(49)

 

規格外野菜が畑を元気に

 川並さんが力をいれているのが、コンパニオンプランツ(違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり、成長を助ける)の活用です。
 「地域のネギ農家からネギ坊主が出てしまい出荷できなくなった規格外ネギを譲り受け、ナスやズッキーニの間に植えています。すると、虫の被害が少なくなるなど、確かな手応えを感じています」
 「JAS有機を取得しなかったからこそ、地域の慣行農家さんとも連携できました。規格外ネギに新たな役割が生まれ、お互いに支え合える仕組みになればうれしいですね」
 廃棄されるはずだった農産物が、畑を守る力へ。そんな新しい循環が少しずつ生まれています。

緑肥が天然のマルチに

 川並さんがもう一つ取り組んでいるのが、緑肥作物ともみ殻を使ったマルチ栽培です。
 「『てまいらず』という大麦をまいています。夏には自然に枯れるため、借り倒す手間がかかりません」
 昨年、冬瓜畑に張ったビニールマルチが強風にあおられ、苗がちぎれる被害に加え猛暑によりマルチの上で冬瓜のツルが焼けてしまう事例がありました。そこで今年はこの「てまいらず」ともみ殻で株元を覆う栽培方法に挑戦。今年は、その成果もあり、冬瓜のツルは切れることも、猛暑で傷むことなく順調に育っています。
 一方で新たな課題も見えてきました。もみ殻は、積み過ぎると発酵熱で苗を痛める可能性があるため今年は安全を優先して、もみ殻を薄めに敷きました。その結果、雑草を十分に抑えることができず、株元には雑草が多く生えてきました。
 しかし、環境再生型農業では、失敗も大切な学びです。
 実際に畑を見ていると、生えた雑草が冬瓜を強い日差しから守り、ツルを支えるクッションのような役割を果たしていることに気づきました。
 畑を飛び回るモンシロチョウは、今の時期は花粉を運ぶ大切な存在です。一方で大根を育てる時期になると、その幼虫は食害をもたらします。
 「つまり、自然界には『害虫』と『益虫』という区別はなく、人間の都合によって、その呼び方が変わるのです」と川並さんは話します。

農業は人の心を動かす

 川並さんは2024年から、農業体験や援農ボランティアの受け入れも始めました。
 畑で一緒に汗を流し、土に触れながら農業への思いを伝えると、「農業って面白いですね」「また来ます!」、そんな声が少しずつ増えてきました。「農業には人の心を動かす力があります」
 食べ物を作ることの大切さ。農家が地域の農地や自然を守っていること。農家がいなくなってからでは、元には戻りません。だからこそそうしたことをもっと多くの方に知ってもらいたいと考えています。

仲間を増やしたい

 こうした思いを形にするため、川並さんはクラウドファンディングに挑戦しています。目的は、単に資金を集めることではありません。「応援してくれる仲間を増やしたい」。その一心です。
 支援金は、収穫体験や援農ボランティアの環境整備、休憩用テントや作業道具の充実、コンパニオンプランツ用の規格外野菜の活用、緑肥の種や環境再生型農業をより推し進めるための機材購入などに活用する予定です。
 「もっと多くの人が畑に来て、農業を体験し、食べ物や自然について考えるきっかけを作りたい」。その挑戦は、おひさま農園だけではなく、地域の農家同士が支え合う新しい農業の形にもつながっていきます。
 環境を守りながら、おいしい野菜を育てる。そして人と人がつながる農業へ。山武市から始まる新たな挑戦に今、多くの期待が集まっています。