分析センターだより 縄文土器から痕跡みつかる 稲作伝来以前から土着か?(2026年08月24日 第1712号)
害虫 コクゾウムシ
古人の主食ドングリやクリでも発生・繁殖可能
コクゾウムシ
気温が上がるこの時期になると、お米に混入した異物を判別する検査依頼が届くようになります。技術が進歩した今日でも、混入をゼロにする管理は難しいようです。
中でも悩ましいのが昆虫です。見た目の印象も大きいため、より慎重な検査が求められます。その判断に迷ったとき参考にするのが、農研機構の「食品害虫」のウェブページです。丁寧にまとまっているだけでなく、マニアックなコラムもあり、検査に疲れたときには、良い息抜きにもなります。
先日、そのコラムで興味深い話を見つけました。縄文土器からコクゾウムシの痕跡が見つかるというものです。土器に死がいが残っているのではなく、粘土に紛れ込んだコクゾウムシがそのまま焼かれ、土器の表面に「虫形の穴」として残っているのだそうです。
「それが一体どうしたのか」と思われるかもしれませんが、実はこれまでの通説では、コクゾウムシは稲作伝来とともに朝鮮半島から渡ってきたとされてきました。縄文土器から痕跡が見つかるということは、稲作伝来の時期がこれまで以上に遡る可能性があり、通説を覆すことになります。
この謎に対して、熊本大学の小畑弘己先生が行った実験では、コクゾウムシは縄文人の主食であったドングリやクリでも発生・繁殖できることが分かったそうです。つまり、彼らは稲作とともにやってきたのではなく、日本に土着していた可能性があるようです。
米が先か、コクゾウムシが先か--結論はいまだ出ていませんが、一つの土器から500匹もの痕跡が見つかったという報告もあります。土器に練り込まれてしまうほど大発生していた状況を考えると、私たちのご先祖様も、貯蔵穀物の害虫対策には頭を悩ませていたことでしょう。
飢えへの備えや技術は縄文時代から大きく進歩したはずですが、現代の私たちが抱える米の供給の仕組みのゆがみを見たら、縄文の人たちはどう思うでしょうか。そんなことを検査室で、考える今日この頃です。
(農民連食品分析センター所長 八田純人)

