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「生活」と「生産」から軍事化を止める(2026年08月24日 第1712号)

沖縄知事選に寄せて(寄稿)
関耕平(島根大学法文学部教授)
全国の農民が沖縄と連帯し立ち上がろう

知事選への出馬を表明する玉城デ二ー知事
=4月25日

 いま沖縄では、台湾有事を口実とした軍事要塞化が急速に進んでいます。8月27日告示、9月13日投票の沖縄県知事選挙は、沖縄の今後だけでなく、戦争する国づくりを止められるかどうか、日本全体の将来にも大きく影響する選挙です。しかし、軍事基地強化の影響は平和の問題だけではありません。農地や農業、地域の暮らしにも大きくかかわります。この沖縄県知事選挙は、こうした地域の「生活」や「生産」を左右する重要な選挙です。

基地強化に抗し農業振興に尽力

 私はここ数年、沖縄の離島に通いながら、軍事基地の強化の実態と、それでも対抗し続けながら「生活」や、農業といった「生産」を守っていこうとする人々の動きを見つめてきました。たとえば、美(ちゅ)ら海水族館の沖合に浮かぶ伊江島(伊江村)は、花きやサトウキビ栽培、畜産が盛んな島ですが、村の面積の35%が米軍基地です。その島で農業と畜産を営む玉城増生(たましろ・ますお)さん(前村農業委員会会長)は、土・日に米軍基地内の自分の土地に許可を取って立ち入り、牧草を採ってきているといいます。
 玉城さんによると、米軍基地に農地を占有される賠償として支払われる「軍用地料」が年々引き上げられるなかで、「農地を耕すより貸した方が収入になる」と考える人が増え、農業への意欲がそがれ、耕作放棄地が増え、さらに土地が投機の対象として島外の人に売却されることも増えているといいます。
 それでも玉城さんをはじめとした島の農民たちは、こうした軍用地料にも負けないくらいの高い付加価値をつけて、この島の農業を盛り上げていこうと努力しています。
 サトウキビの搾りカスや牛ふんを使って有機たい肥を活用した「循環型耕畜連携」、経産牛を肥育して「伊江牛」としてブランド化する取り組み、また、この島でとれた小麦は質が高く、沖縄ブランドのオリオンビールの原材料にもなっています。また、リゾート開発による農用地解除を求める圧力も高まる中、頑としてこれを拒み、農業と畜産にこだわった島づくりを展開しようとしています。
 沖縄県の読谷村では、米軍基地の返還を勝ち取り、その跡地を「破壊につながる基地ではなく、生産につながる農地を」という理念にもとづいて再生し、いまでは沖縄土産の定番「紅芋タルト」の原料の生産拠点となっています。

安心の地域作る平和を守る土台

 このように沖縄では軍事基地への対抗としての農業の営みが各地にあるのですが、その原点になっているのが、米軍にたいして非暴力抵抗の土地闘争を展開した、伊江島の阿波根昌鴻(あはごん・しょうこう)です。
 彼の著書『米軍と農民』(岩波新書、1973年)には、「そこ[反基地闘争]には、『たたかいとたたかい』ではなく、『生活とたたかい』があり『生産とたたかい』があった」と記されています。「生活」の糧であり「生産」の基盤である農地を、米軍によって取り上げられた阿波根のたたかいは、文字通りの切実なたたかいであったことでしょう。
 つまり、平和を求める力は、平和主義という思想(イデオロギー)だけではなく、軍事基地によって農地を奪われ、生活や生産の基盤を脅かされた農民の切実な実感から生まれたものでした。
 いま沖縄で、そして全国各地で進む軍事化に対し問われているのは同じことではないでしょうか。農地を守り、生産を続け、安心して暮らせる地域をつくりあげていくこと。それこそが平和を守る運動の土台です。
 沖縄県知事選挙は、軍事化に対抗し、「生活」と「生産」を守ることができるかどうか、その選択が問われる選挙でもあります。全国の農民が沖縄と連帯し、「生活」と「生産」を守る声をともに大きくしていきたいものです。