さいたま食肉卸売市場の廃止問題 「存続して」の声 地域に広がる(2026年08月31日 第1713号)
公設市場は農産物の買いたたき許さない“防波堤”
全国の力で廃止ストップを
食肉市場は流通の要
要請書を掲げるみなさん
全国に10カ所しかない公設の食肉中央卸売市場の一つ、さいたま市食肉中央卸売市場・と畜場の廃止問題がいま、存続を求める大きな運動に発展しています。埼玉農民連も参加する同市場の「廃止問題を考える会」の運動を紹介します。
運動したことで市も態度を改善
食肉の中央卸売市場は大消費地の政令市を中心に整備され、安全・安心の食肉流通の“要”として重視されています。
しかし、設置者のさいたま市は、畜産農家の減少、食肉の卸売市場経由率の減少、移転再整備にかかる経費負担などを理由に、廃止の方向で一方的に進めています。
これまで「考える会」では、市場機能の維持のために、関係者との丁寧な協議、廃止に伴う影響調査、代替え施設の確保、県や国との連携などを何度も求めてきました。
しかし市は当初、「流通業者の裾野は広範で、調査は困難」と、影響調査すら行おうとしませんでした。こうした市の乱暴な態度に、関係者から、「影響調査すら行わず、なぜ廃止を決められるのか。無責任だ」と怒りの声が上がっています。
「考える会」では、6980人分の署名提出(6月2日)をはじめ、関係者や農家の声を直接、市に届けてきました。また市・県議会の全会派や関係団体とも懇談を重ね、6月の市議会には丁寧な協議と廃止撤回を求める請願を提出。複数の会派が「決定は丁寧に行うべきだった」「機能維持の責任をとるべきだ」と市の態度をただし、議会の大きな争点に押し上げてきました。
答弁で市は、「関係者に対して速やかに調査を開始する」「存続を求める声も理解している」として、市場の「機能維持」が必要なことをはじめて認めました。
粘り強い運動でやっと議論のスタートラインに近づきつつあります。
広域的責任を負う国や県の対応にも問題があります。
同市場が年間で取り扱う6万7千頭のうち、約半数の3万頭以上が埼玉県内産で、他に北関東や東北など全国から牛や豚が出荷されています。
埼玉県は、県内の牛または豚を飼養する農家226戸を対象に、アンケート調査を行いました。
県は、「どの畜種でも半数以上が、同市場を利用しており、特に乳用牛の利用が多い」とし、廃止された場合、「流通経費の増加や売り上げの減少、また畜産農家の離農の増加などの懸念や、消費者への食肉流通にも大きな影響がある」と指摘しています。
問われる県・国の行政としての責任
「考える会」は7月28日に、埼玉県にも要請を行いました。
考える会共同代表で埼玉農民連の関根耕太郎事務局長は、「県も畜産を重要な基幹産業として振興条例も制定し、流通安定施策を行ってきた。県の調査でもブランド豚の消失など廃止の悪影響は明らか。経済合理性だけでなく、公設市場の高い公共性を重視して、県は国と連携して主体的に対応をするべきだ」と訴えました。
要請に参加した栄養教諭は、「学校給食で取引している精肉業者も、『市場が廃止されたら安定した値段で新鮮でおいしいお肉が供給できなくなる』と話している。安定供給のためにも存続してほしい」と訴えました。
また「考える会」では、品川区芝浦にある東京都食肉市場の資料室を訪問し、市場担当者にも話を聞きました。
「畜産農家が少ないのは東京も同じだが、廃止という話は全く出ていない。むしろ大消費地の市場として、消費者に食肉を供給していく責務は重大だと考えている。建値市場の一つとして日本全国の食肉価格を支えている自負もあり、公設市場としての使命は増しているのではないか」
食肉をはじめ日本の農業生産者は、長い間、巨大な購買力を背景にした大手小売り企業の買いたたきに苦しんできた歴史があり、公設卸売市場は微力ながらもこれを押しとどめる防波堤としての役割を果たしています。
さいたま食肉市場の存続は、中小農家の農産物の買いたたきを許さない流通制度を守っていくうえでも、全国的な課題です。地方の問題と片付けず、9月15日開催のシンポジウム(別項)で学びを深め、存続を求める署名を、全国で広げていきましょう。署名用紙は農民連のホームページからダウンロードできます。

