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アメリカ産生ジャガイモの輸入解禁を許すな(2026年09月21・28日 第1716号)

 アメリカ産生食用ジャガイモの輸入解禁の動きが急ピッチで進められています。農民連と農民連ふるさとネットワークは9月10日、食と農の権利を守る緊急学習会「わたしたちのじゃがいもはどうなるの? 輸入解禁の危険とねらい」をオンラインで開催しました。農民連食品分析センターの八田純人所長の基調講演(要旨)と、北海道・小清水農民組合の大沢稔さんの生産現場からの報告を紹介します。

 

農薬被害と病害虫侵入の危険が現実に
日本市場を戦略的に狙うアメリカ
農民連食品分析センター 八田純人 所長

 いまアメリカ産生食用ジャガイモを日本で全面輸入解禁しようとする手続きが進められていますが、2026年8月に公開された農水省「米国産一般流通用生食ばれいしょ輸入検疫協議の関連資料」によると、アメリカ産ジャガイモの輸入解禁のために、「リスク管理措置に関する協議が必要な病害虫を特定」したとあります。

 

日本は長い間
輸入禁止だった

 このまま進んでいけば、アメリカ産の生ジャガイモがスーパーに並び、食卓にのぼるということがかなり現実味を帯びてきています。
 日本は長い間、アメリカ産の生食用(生鮮)ジャガイモの輸入を禁止してきました。ポテトフレークや冷凍・乾燥ポテトなどは輸入しても、生のジャガイモ輸入は認めてこなかったのです。なぜかというと、ジャガイモシロシストセンチュウなどの病害虫から日本国内のジャガイモの生産を守るためです。
 ジャガイモシロシストセンチュウは、根に寄生してジャガイモの生育を阻害し、いずれは枯らしてしまいます。駆逐しようとしても、その卵は15年以上、休眠して生存でき、一度農地に侵入すればわずかな土の移動で広がってしまい、防護・駆除はきわめて困難です。
 ところが、アメリカからの生ジャガイモの輸入解禁要求に屈して、2006年にはポテトチップス用に限り、2月から6月までの間、輸入を認める緩和を行いました。
 さらに20年2月には、1年中輸入を認める規制緩和が行われ、これまで国産原材料に限られていたポテトチップス製造に輸入ジャガイモを使用できるようになりました。
 こうした背景には、アメリカ政府が日本のジャガイモの市場開放に強い関心をもっていることがあり、このまま市場開放が進んでいけば、多くの問題が生じます。

 

発がん性疑われる農薬の検出も

 じゃがいもを使用した外国製造の製品を検査すると、共通してクロルプロファムという農薬(除草剤)が検出されます。クロルプロファムは、日本では、ジャガイモからはまず検出されることのない農薬です。
 農民連食品分析センターでは、05年にカナダ産とアメリカ産のフライドポテトからクロルプロファムを検出しました。またポテトチップスに輸入ジャガイモが使用されるようになった25年には、ポテトチップスの残留農薬調査も行いました。
 その結果、調査をした27製品中、海外のジャガイモを原材料にしていると考えられる9製品からクロルプロファムが検出されました(表)。また、23・24年にアメリカ農務省がアメリカで市販されているジャガイモ861検体について行った検査結果でも、90%の検出率でクロルプロファムが検出されています。

 

ポストハーベスト農薬も大問題

 また、輸入ジャガイモには、ポストハーベスト(収穫後に散布する)農薬の使用が認められていることも大問題です。アゾキシストロビン、ジフェノコナゾール、フルジオキソニルなどの殺菌剤で、食品衛生法の基準値はジャガイモの場合、4ppmです。20年の改定前は0・2ppmでしたから、20倍に緩和されたことになります。これは、輸入緩和を背景に置いた緩和ではないかと思われます。
 ちなみにクロルプロファムの基準値は30ppmです。ジフェノコナゾールも含めて現状では基準値以内に収まった流通状況ではありますが、生食用ジャガイモの輸入が解禁されるようなことになれば、これら農薬の暴露(体に浴びたり、摂取したりする)機会が増えることになるのではないかと危惧されます。
 クロルプロファムの毒性は、EPA(アメリカ環境保護庁)の発がん性評価ではグループEに分類され、発がん性の証拠は不十分ということになっています。しかし、EU(欧州連合)では「健康上の懸念が残っている」として、予防原則の観点から19年から使用禁止になっています。

 

病害虫侵入機会
増やすおそれ

 輸入農産物からくるもう一つの問題として、日本への侵入機会を与えるべきでない病害虫があります。農水省が21種をリスト化し、そのなかにジャガイモシロシストセンチュウとジャガイモシストセンチュウが含まれています。
 ジャガイモシロシストセンチュウは06年、アメリカ・アイダホ州で発見され、当初は911エーカー(369ヘクタール)だったものが、23年には総規制区域が6495エーカー(2628ヘクタール)にまで広がり、アメリカでさえ20年かかっても根絶できない害虫です。
 日本国内でのジャガイモシロシストセンチュウの発生状況をみると、15年に北海道網走市内の一部のほ場で初確認され、その後、大空町、斜里町、清里町などでも確認されています。各分野の人々の尽力で抑え込めてはいますが、その負担と苦労はたいへんなものがあります。
 さらにアメリカ産生ジャガイモがスーパーに並ぶような流通が始まれば、汚染を含む部位が捨てられたり、不適切な栽培がされたりするおそれがあり、輸入解禁が侵入機会を増やすことになります。日本の種芋の9割以上を生産している北海道でのまん延を招くようになれば、北海道の生産者に負担をかけるだけでなく、国産ジャガイモの生産基盤全体に大きな被害をもたらすことになりかねません。

 

国内農業に打撃
輸入解禁はノー

 日本の市場を戦略的にねらうアメリカですが、全米ポテト評議会(NPC)というジャガイモ業界に関連する政策提言やロビー活動などを得意分野とする団体が26年4月24日にプレスリリースしたものによれば、「トランプ政権、日本向け輸出の拡大へNPCに助成金を交付」と出ています。日本の生鮮ジャガイモの全面的市場開放のため、アメリカ農務省海外農務局から17万9千ドル(約2900万円)ほどの交付を受けたことを紹介しています。
 仮に輸入解禁後、どこかの地域で新たにシロシストセンチュウの発生が確認されたとしたらどうなるのか? これまでの経緯を考えると、「アメリカからの輸入生食用ジャガイモ」が発生原因だと推測されても、直接的な因果関係まで証明することは困難だと思われます。そうなると因果関係がはっきりさせられない以上、輸入制限はできないのではないでしょうか? 被害の負担は国内の生産者、農業関係者、行政になってしまいます。
 生食用ジャガイモの全面輸入解禁は、国産なら食べずにすむ成分への暴露を増やすことになり、病害虫の侵入機会を増やして国内のジャガイモの安定生産に深刻な影響をもたらしかねません。食料供給の未来を考えるなら、生食用ジャガイモの輸入解禁は絶対に認めるべきではないと考えます。これからもみなさんと一緒に反対のアクションを進めていきたいと思っています。

 

シストセンチュウが広がればジャガイモ生産崩壊の危機
北海道 小清水町 ジャガイモ生産者 大沢稔さん

 北海道小清水町で、ジャガイモなど畑作物を52ヘクタール耕作しています。今まさに生食用のキタアカリという品種の収穫の真っ最中で、その後にポテトチップス向けの加工用品種の収穫が続きます。
 新聞などでアメリカ産生ジャガイモの輸入を解禁する動きが報じられていますが、生産農家として「とんでもない! 日本の産地はたいへんなことになる」という怒りでいっぱいです。
 小清水では10年前にジャガイモシロシストセンチュウが、44年前にはジャガイモシストセンチュウが発生し、畑作農家に今なお大打撃を与えています。
 ひとたびシストセンチュウが発生したほ場には立て看板が立ち、発生農場だと一目瞭然です。シストを含んだ土が靴にくっついたりして他のほ場に運ばれないよう、発生ほ場には立ち入り禁止にしたり、土がつきやすいビート栽培に使う機械などに付いた土ももとの農場に戻したりと、いろいろ工夫もしていますが、対策に非常に苦労しています。シストセンチュウが農地に入ったら、10年や15年では駆逐できません。
 また、ジャガイモは輪作体系になくてはならない作物です。北海道の畑作はジャガイモ、小麦、ビート、豆類などの作物を年ごとに順番に作る「輪作体系」で生産力を守っています。シストセンチュウのまん延でジャガイモが作れなければ、北海道農業そのものが危機に直面します。
 シストセンチュウのまん延は、北海道だけでなく全国の畑作農家が危惧し、国に陳情したり、議会に要請したりと輸入解禁に反対の声をあげています。国内農業を守るのが国の仕事のはずです。なんとしても輸入解禁はやめてもらいたいです。

 

北海道農民連
道に要請
生ジャガ輸入解禁は絶対に認められない

農政事務所に要請する北海道連。(中央左から)岸本副委員長、富沢書記長

 北海道農民連は8月31日、備蓄米の買い戻し・買い入れ、生食用ジャガイモの輸入解禁は行わないこと、生産資材高騰対策の早期実施を求めて、北海道農政事務所への要請を行いました。

食料自給率引き下げにつながる

当別町議会に請願を提出する当別農民組合の鈴木勝也さん(左から2人目)

 岸本辰彦副委員長が「このままでは米の生産がなくなる懸念もあり、早急に備蓄米買い戻しと価格安定対策が必要だ。生食用ジャガイモ輸入解禁は食料自給率をさらに引き下げることになるので解禁は絶対認められない」とあいさつ。
 対応した北海道農政事務所長は、ジャガイモの輸入解禁問題について、「リスク分析を行う段階に入った(11段階の内4段階目)。WTO(世界貿易機関)にそった科学的な根拠に基づいた対応をしなければならないし、国内の生産に影響を与えないようにしなければならない。現在生産者へ病害虫などの問題で説明を行うことにしており、札幌、帯広、北見で説明会(非公開)を行い、9月18日は公開の説明会を開催する」と述べました。
 所長からの回答を受けて、富沢修一書記長は「説明会というのは解禁のためのものではないのか。近年ジャガイモの生産が減少してきており、抵抗性品種の開発途上で薬もなく、解禁によって病害虫が広がることになれば深刻な事態になる」と指摘しました。

 

道内全市町村議会にも意見書採択を要請

 北海道連は、全道179市町村議会に対して「備蓄米早期買い入れ・買い戻し」「生食ジャガイモ輸入解禁反対」の意見書採択を要請しました。
 8月28日に、当別町農民同盟は、新日本婦人の会など共闘団体とともに町議会へ生食用ジャガイモ輸入解禁の反対と、円安・資材高、物価高騰から経営を守る緊急対策を求める請願2件を提出しました。
 9月10日には、当別町議会産業厚生常任委員会で、じゃがいも輸入解禁反対の意見書について全会一致で採択されました。本会議で採択されるもようです。
 議員からは、北海道産で十分賄える中で輸入する必要性への疑問や、農薬・病害虫のリスク、農家経営の悪化や離農への懸念、米国の要請を背景に解禁が進むことへの疑問が相次ぎました。
 9月14日現在で、網走市議会でも採択の見込みです。

 

消費者団体、地域JAなど
解禁するなの声続々
オンライン署名も呼びかけ

 各団体もジャガイモ輸入解禁に抗議の声をあげています。
 日本消費者連盟は、米国産生ジャガイモの全面輸入解禁に反対し、食の安全と日本の農業を守るための緊急要請を農水省に対し行いました。
 要請は、(1)米国産生ジャガイモの輸入解禁に向けて、植物防疫法省令の改正及び内部手続きを中止することを求めます、(2)病害虫の検疫・防疫体制を強化するとともに、国産ジャガイモの安定生産と国内農業の生産基盤を守り、食料安全保障を強化する政策に転換することを求めます、(3)日米貿易において食の安全と農家経営を脅かす米国からの圧力を明確に拒否し、日本の食料主権を守ってください--の3つです。
 コープ自然派は、「米国産生ジャガイモの全面輸入解禁に反対し、食の安全と日本の農業を守るための緊急声明」を農林水産大臣あてに提出しました。
 長崎県JAグループは8月31日、「米国産生鮮ジャガイモの輸入解禁に反対する」と農林水産省に伝えました。
 長崎県は北海道、鹿児島県に次ぐ全国3位の産地であり、輸入すれば病害虫侵入リスクや国内価格低落など「多大な影響が危惧される」と訴えました。
 食料安全保障推進財団(鈴木宣弘理事長)は現在、「日本のジャガイモを守りたい!#米国産の生ジャガイモの輸入に反対します」とするオンライン署名に取り組んでいます。
 署名にご協力ください。
 https://c.org/XPQ5jBJpB9

 

輸入ジャガイモの農薬検査費用ための
クラウドファンディングにご協力を

 農民連食品分析センターでは、輸入ジャガイモ製品の農薬調査費用を募集するクラウドファンディングを行っています。支援と、広報にご協力をお願いします。
 クラウドファンディングの2次元コード  URL:https://earlybirds.ddo.jp/bunseki/news/potatocf2026/index.html