アイコン 新聞「農民」

第3回オーガニック給食フォーラムin栃木・小山(2026年09月21・28日 第1716号)

アグロエコロジー分科会
子どもたちが幸せに暮らせる未来のために
持続可能な社会実現を

 第3回全国オーガニック給食フォーラムが7月25、26の両日、栃木県小山市で開かれ、25日には8つの分科会が開かれました、分科会「アグロエコロジーが目指すもの~こどもたちが幸せに暮らせる社会~」には農家、市民、学校給食関係者らが参加しました。
 座長を務めたフリージャーナリストの吉田太郎さんは、開会あいさつで、世界が気候変動、生物多様性の喪失、飢餓といった多重的な危機に直面するなか、有機農業をベースに、持続可能な地域の食料システムを創造していくアグロエコロジーへの注目が集まっている点にふれ、「この分科会では、世界と日本、そして栃木での可能性についてともに考えていきましょう」と提起しました。

 

給食は公共政策
各国の事例紹介

あいさつする座長の吉田さん

 事例発表では、5人が報告。宇都宮大学農学部助教授の松平尚也さんは「オーガニック給食をアグロエコロジーから考える」のテーマで発言。世界では、学校給食が地域農業や環境、教育、地域経済をつなぐ公共政策として世界的に注目されているとして、アグロエコロジーの考え方を基礎に海外のオーガニック給食の事例を紹介しました。
 フランスでは、農家、消費者団体、環境団体、自治体などが参加する「食料国民会議」が開催され、有機農家や消費者団体などが「農家が生活できる価格」と「子どもたちの健康で持続可能な食」の両立を求め、学校給食への有機食材の導入を提案しました。その結果、学校給食では環境や品質に配慮した食材を50%以上、そのうち20%を有機農産物とするエガリム法が制定されました。学校給食は単なる食事ではなく、子どもの健康を守り、地域農業を支え、持続可能な社会を育てる公共政策として位置付けられています。
 世界から学ぶ3つのポイントとして、(1)学校給食で地域の農業を支える、(2)学校給食を食育と環境につなげる、(3)地域みんなで子どもたちを育てる-点をあげました。
 まとめとして「オーガニック給食は有機野菜を食べることだけが目的ではありません。地域の農業を支え、子どもたちの学びを深め、地域の食文化や環境を未来へつなぐ取り組みです。地域みんなで子どもたちを育てる大切な場であり、アグロエコロジーはそのつながりを育てる考え方といえます」と結びました。

 

自然の恵み力に
栃木県内の実践

 「私たちの暮らしを支える自然の恵みについて・小山市各地区の風土性調査から」と題して、有限責任事業組合風景社組合員の廣瀬俊介さんが報告。市民の生活から産業までを支える、市の自然の恵みについて説明しました。
 25年に策定された「田園環境都市おやまビジョン」は、30年後の市のあるべき姿を構想し、市民一人ひとりの幸福な生活の実現をめざしたものとして、田園部と都市部の調和のとれた市域の環境を次代に引き継ぐものです。
 市の自然、歴史、文化に関した調査と、地域社会の現状や問題を分析する調査を組み合わせて風土性調査を実施。人間が生きるために自然から受ける恵みは、(1)食料、繊維、燃料などの供給サービス、(2)大気・気候、水の調節などの調整サービス、(3)土壌形成、物質循環などの生息・生育地サービス、(4)精神・文化的価値、教育などの文化的サービスの4つに大別されることを示しました。
 まとめとして、自然の恵みは、農地やかつての肥料林、燃料林などが生物多様性を支えるために、農の継承が必須であること、自然と人間の間には、自然の恵みを受けて成り立つ農と食、農の生態系があると語りました。
 オーガニック青果の流通・販売を手掛ける「ナチュラルフード森の扉」代表の野原典彦さんは「市民一体型のアグロエコロジーを目指して~『大豆三粒の金仏』地域内の持続可能なフードシステムの構築」について発言。「タネから育てるみそづくり」として、自給率が低く、日本の食文化・発酵文化を支える大豆の種まき・栽培、収穫・加工を通して翌年の種としてつなぐ「自産自消」の循環をめざしています。取り組むグループの輪を広げ、茂木市では、製品化したみそを学校給食につなげる取り組みが始まりました。その後、小山、宇都宮両市などに広がりました。
 さらに江戸時代から続く民話「大豆三粒の金仏」を題材に、子どもたちが県内の耕作放棄地を活用して育てた大豆をみそにした「善願寺味噌(みそ)」として、給食に提供し、自産自消から「地産地消」「県産県消」へと広がっています。「『自分で食べるものは自分でつくろう』を目標に、みんなが主人公のアグロエコロジーへの取り組みで、楽しくつながって社会を盛り上げていきましょう」と訴えました。

 

参加型の自給圏夢プロジェクト

毎年恒例の踏み込み温床作り。ここで落ち葉の発酵熱で春から夏に向けての野菜苗を育てます=2026年1月27日、こくぼ農園

 「アグロエコロジーを通してこどもたちに夢ある将来を」のテーマで、こくぼ農園(真岡市)代表の國母克行さん(栃木農民連会長)が報告。「地球・人・生きものに優しい持続可能な農業に、消費者とともに取り組んでいます。農薬、除草剤、化学肥料、遺伝子操作種子も使いません」と自己紹介し、肥料や資材の自給、脱プラなどの取り組みについて述べました。消費者とともに、アグロエコロジーの実践で参加型食料生産をめざし、自給圏の構築にも尽力しています。
 「残留農薬、食品添加物、遺伝子操作食品、さらに工場大量生産の『高度加工食品』など目に見えない課題が次々とでています。根本に低い食料自給率の問題があります。子どもたちに本物の味を教えてほしい。それが将来、健康に生きていく力になります」と訴えました。
 こくぼ農園に集う仲間たちで立ち上げた「とちぎ夢給食プロジェクト」代表の安田理恵子さんは、「身近な実践から私たちのアグロエコロジー」と題して発言。アグロエコロジーは「未来の子どもたちにもおいしい食べものと豊かな自然を残すための考え方」だと述べ、子どもたちに伝えたいこととして、「土に触れ作物を育てる楽しさ、大地を守る農家さんのこと、選び食べることの大切さ、手作りのおいしさ」をあげました。
 大豆の種まきや収穫、みそづくり体験会、農家と連携した米トラストなどの取り組みを紹介し、「何を食べるか、誰から買うか」の今日の食材選び、小さくても育ててみるなどの、暮らしのなかのアグロエコロジーを呼びかけ、食べる人、作る人、地域に暮らす人はみな、ともに未来の食と農を育てる仲間であり、「自分らしいアグロエコロジーを始めましょう」と呼びかけました。

 

学校給食の実践
子どもが主権者

 討論では、農民連の長谷川敏郎会長が発言。繁殖和牛を飼育し、畔草や山の草を牛のえさとして自給しながら、牛ふんなどで作った栄養分豊富な肥料を田んぼに投入し、ツバメに虫取りをさせるなどの自らの実践を紹介しました。
 総括を國學院大學研究開発推進機構客員教授の古沢広祐さんが行い、アグロエコロジーが子どもたちとともに有機農業に取り組み、命を蘇らせる試みであり、失われた感性を取り戻すのは味覚からだと述べました。
 座長の吉田さんは26日の全体会で、分科会の報告を行い、「給食の主権者は子どもたちであり、子どもが変われば親も変わる。子どもたちに学びながら、豊かな自然とおいしい食文化を残し伝えていくことが、子どもたちが幸せに暮らせる未来への一歩だ」とまとめました。