労災保険の法改正で農家はどうなる?(2026年10月12日 第1718号)
農民連税金対策部が開催
人を雇うすべての農家が加入義務化
安全対策と一体に検討を

7月に労働者災害補償保険法が一部改正されました。これまでは任意適用となっていた小規模な農林水産業(常雇いの従業員が5人未満で労災に特別加入していない)も、強制加入の対象となり、多くの農家が対象となる大きな改正です。
農民連本部税対部は9月11日、課題別学習会の第4弾として「労災保険の法改正で農家はどうなる?」を開催しました。千葉県の社会保険労務士、吉田哲治さんを講師に労災制度の現状と改正で変わる点や、農家に必要な対応などを学びました。
吉田さんは、農業が他産業に比べ労働災害・死亡事故が多い傾向にあることを紹介し、労災保険に加入していなくても事業主には災害補償責任があり、場合によっては1千万円以上の補償が必要になるケースもあること、事業者が倒産してしまえば従業員も補償を受けられなくなることから「安全対策と労災保険を一体として考えるべき」と指摘しました。
今回の改正で有期、無期雇用を問わず、雇用関係にある従業員はすべて労災の加入が義務づけられます。農家本人はこれまで通り、特別加入制度を利用することで、労災の補償を受けられます。
農業者本人と従業員は労災の窓口も異なります。農業者は特別加入を扱う「特別加入団体」を通じて加入。従業員は事業主が自ら労働基準監督署に届け出、納付を行うか、「労災保険事務組合」に委託します。
また、吉田さんは農家の状況を4通りに分けて(図)、「今まで労災に未加入で、今後人を雇う農家」は「最優先で加入準備が必要」と述べました。「特別加入している農家で、季節・短期雇用がある人」は「要注意。現行法でも加入義務があり、労働者に該当するか、すぐに確認を」など対応のしかたを解説しました。
また実際に事故が起こった場合は、「まずは救命・医療を最優先。そのうえで、日時・場所・作業内容や目撃者などを記録し、特別加入団体や労働保険事務組合へまずは相談を」と解説。「来年9月の施行から移行期間もある。わからないことがあったら特別加入団体や労働保険事務組合、社労士に相談してほしい」と呼びかけました。
学習会では奈良県農民連の水井康介事務局長が奈良県での取り組み状況も紹介しました。
奈良県では労働保険事務組合を立ち上げ、特別加入だけでなく農家が雇っている従業員の労災事務も取り扱っています。労災の要求で加入する人は年数人ですが、他の要求で入った会員24人が、4月以降で労災に特別加入しています。
水井さんは「生産者の高齢化もあり、年々事故が増えている。特別加入団体とその先の事務組合を作ることは、事務委託の手数料を抑える意味でも農家の経営を守ることにつながる。20年の改正で他県の事務組合にも委託できるようになっている。ブロック単位でも対応できるよう目指すべきではないか」と農民連で取り組む意義を強調しました。

